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2006年2月10日 (金)

高島俊男先生

 五十年あまりむかし、毛沢東のことを「けざわあずま」と言って物笑いのタネになった国会議員がいたそうな。
 「井真成【せいしんせい】」はたしかに日本人であるが、しかしこの名前は、この人が唐の都長安で名乗っていた中国名前なのである。つまり名前の点では中国人とおなじなのだ。
 中国人の名前は漢字の音でよむ、というのは日本の常識である。小学生でも関羽を「せきはね」と言ったり張飛を「はりとび」と言ったりする子はいない(と思う)。
 井真成を「いのまなり」と言ったりするのは、その知力小学生以下、けざわあずま国会議員とチョボチョボの、饅頭屋の親父くらいのものかと思っていたら、なんと日本古代史専攻の学者でそう言ったり書いたりしているのがいるんだそうだ。
 饅頭屋にたのまれてチンドン屋を買って出たのかな?
 いっぺん顔が見たいものだ。

 週刊文春の高島俊男先生の連載「お言葉ですが…」522回「井真成という呼び名」の出だしの部分です。2月16日号に載っていますから、あとは買ってお読み下さい。
 しかし、なんと小気味のいい悪態のつきかたなんだろう。この先生はいつでもこういう調子ですね。怖いものがないらしい。週刊文春の編集部も偉いね。日本古代史専攻の学者なんぞはどうでいいが、饅頭屋やチンドン屋が故障を申し入れないだろうか? 「全日本饅頭製造業連盟」か何かが「差別だ」と抗議してきたらどうするんだろう。
 「いっぺん顔が見たいものだ」の次の段落は、
この「井真成」は現代漢語音でXXXX、国際表記では多分YYYYということになるだろう。(XXXXとYYYYはそれぞれローマ字による複雑な発音表記。雑誌を見てください。)日本ではむかしから日本漢字音の漢音で言うのが慣習だから、セイシンセイということになるわけだ。
 と、一転して学問的になる。
 この本論の部分がむつかしくてよく分からないのですね。当方の学がないのがよくないのですが、話が高級すぎる。週刊誌のページでは無理です。次回からもっとやさしい話になるそうです。
 しかし、中国語をやっている人はうらやましいな。英語だと、どうしても土着英語話者には敵わないという意識がある。中国語の場合は、もちろん高島先生のようにしっかり勉強した場合だけれど、中国人の学者が相手でも「あいつは馬鹿だ」と言うことができる。何しろ古典の知識がものをいう言葉だから。
 高島先生の本は、『お言葉ですが…』シリーズのほか、『本が好き、悪口言うのはもっと好き』など何でも読む値打ちがあります。絶対おすすめです。痛快です。

 学識はとうてい敵わないけれど、「本が好き、悪口いうのはもっと好き」という点では、はばかりながら私も同じです。これから私も人の翻訳の悪口を大いに言うつもりです。「翻訳者なんかやめて、饅頭屋かチンドン屋になれ」なんて言うかもしれない。悪しからず。
 
 

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