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2006年4月25日 (火)

モリアーティ元教授の職業(4)

 ブログを読んでコメントを寄せてくださる方がいるのは有り難い。
 エフティさんからOwen Wingraveの邦訳がもう一種類あることを教えていただいた。創元推理文庫から出た『ねじの回転--心霊小説傑作選』に収録されている。国書刊行会のヘンリー・ジェイムズ作品集(7)も刊行中でした。

 国書刊行会といい、東京創元社といい、日本の出版社は凄いですね。こういう翻訳をよく出すものだ。
 
 小説では、スペンサー・コイル先生はオウエン・ウィングレイブから「陸軍士官学校を受験しない」と聞いて驚き、まずオウエンの伯母さんがベーカー街にいるのに相談しに行く。この伯母さんは独身の恐るべき女性である。
「彼女は気位の高い堂々たる女だった。やせてはいるがしかしぎすぎすしたところはなく、広い額と豊かな黒い髪をしていて、その髪は「高貴な」頭部をしていると無理もなく自分のことを考えている女性にふさわしく結われており、今ではところどころ白いものがまじっていた。」
  ベンジャミン・ブリテンのオペラではこの伯母さんは「ドラマティック・ソプラノ」である。(オウエンはテノールではなくバリトンである。)
 しかし、それよりも私はベーカー街というところが気になった。「コイル先生、ホームズに相談すればいいじゃないですか」と思ったのである。ところがよく考えてみると、これは1893年のことである。シャーロック・ホームズはライヘンバッハの滝壺の底に沈んでいることになっていた。ワトソンの前に姿を現して「実はチベットにいたんだよ」などと言うのは翌年になってからである。
 仮にホームズがいたとしても、これは相談しない方がよかった。オウエンがなぜ軍人になりたくないかという微妙な話は、ワトソンにはまったく理解できなかっただろう。ワトソンがこの話を書けば
The Adventure of the Reluctant Student
  というような標題になっただろう。ヘンリー・ジェイムズとはまったく違う話ができたはずだ。
 しかし冗談抜きに、ヘンリー・ジェイムズの小説は凄いです。ぜひ読んでみてください。翻訳でもよいし、原文もそれほど極端に難しくはない。

 もうお一人、土屋朋之氏がコメントを寄せてくださって、大いに助かります。おかげでarmy coachの意味を別の角度から見直すことができる。(続く)

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