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2006年5月12日 (金)

オックスフォードかケンブリッジか(1)

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……ホームズの大学時代についてはこれよりもよく分かっている。彼は内気な性質で、スポーツはボクシングとフェンシングしかやらなかったから、友だちは少なかった。友だちの一人ヴィクター・トレバーは、オーストラリアの金鉱で一財産作ったという前科者の息子である。もう一人のレジナルド・マスグレーブの祖先は1066年に征服王ウィリアムについて来たのだというから、これは正真正銘の貴族である。ホームズは 「僕がカレッジにいたときに云々」 というが、どのカレッジだろう? それよりもまずオックスフォードとケンブリッジのどちらなのか。科学ならケンブリッジだと言う向きもあろうが、これはおかしい。科学者になりたいのなら二年でやめるはずがない。友だちが二人とも大金持ちで、一人は貴族、もう一人もかなり派手な暮らしをしていたこと、それにホームズほどの才能が目立たなかったことを考えると、オックスフォードのクライストチャーチ・カレッジだったのではないかという気もする。しかしこれには確証がない。
 ホームズがオックスフォードに行ったとしても、「グレイツ」 の課程 (古典語、哲学、古代史) を取ったのではない。……
――ロナルド・ノックス『シャーロック・ホームズ文献の研究』(全文はここ

 
 ……Of Holmes’s student days our knowledge is much fuller; he was reserved by nature, and his recreations--boxing and fencing--did not make him many acquaintances.  One of his friends was Percy Trevor, son of an ex-convict, who had made his money in the Australian goldfields; another Reginald Musgrave, whose ancestors went back to the Conquest--quite the last word in aristocracy.  He lived in a College, but what College?  And at which University?  The argument that his scientific bent would have naturally taken him to Cambridge defeats itself, for why should he have been only up two years if he wanted a proper scientific training?  More and more as I consider the wealth of his two friends, the exclusive aristocracy of the one, and the doggy tendencies of the other, together with the isolation which put even so brilliant a light as Holmes’s under a bushel--more and more I incline to the opinion that he was up at the House.  But we have no sure evidence.
  If he was an Oxford man, he was not a Greats' man.……
――Ronald A. Knox, Studies in the Literature of Sherlock Holmes (全文はここ

……ホームズの学生時代についてはもう少し詳しくわかっている。彼は生まれつき内気な性格で、彼の気晴らし――ボクシングやフェンシングのような――も多くの友人をつくらなかった。友人のひとりにヴィクター・トレヴァーという前科者の息子がおり、その父はオーストラリアの金鉱で財産をつくった。また別のひとりはレジノード・マスグレーヴで、祖先はノルマン人の英国征服のころまでさかのぼることができる貴族の出身であった。彼といっしょに学んだのは一体どこのカレッジだったのだろうか? あるいは総合大学だったかもしれない。彼の科学に対する興味が自ずとケンブリッジ入学へ導いたという説もあるが、これは誤りである。十分な科学的教育を受けたいと考えるならなぜ二年間しか通わなかったのであろうか? 二人の友人の財力を考えると納得がいかない。つまり一般人には近寄りがたい貴族の出である友人がいるかと思うと、もうひとりは犬が大好きときている。またホームズのように才能のあるものが孤独でいるというようなこと、これらのことを考えると、彼は学生寮に住んでいたのではないかと思われる。しかしこれについてはたしかな証拠はない。もしオックスフォード出身だとしても貴族の出ではなかったであろう。……
――「ホームズ物語」についての文学的研究 河出文庫『シャーロック・ホームズ17の愉しみ』p.74

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