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2006年9月 9日 (土)

シャーロック・ホームズ、チベットへ行く(3)

 1891年5月、ホームズはノルウェー人シゲルソンの変名で泊まっていたフィレンツェのホテルを引き払い、ナポリ港からインドへ旅立った。
 チベット国境に近いテライ地区で茶の大農園を経営しているヴィクター・トレヴァーを訪ねた。『グロリア・スコット』事件以来、17年ぶりの再会である。
 ここからラサに潜入しようというのである。当時は清朝の勢力がチベットに及び、西洋人の入国は固く禁じられていた。ホームズはインド人に化けることにした。
 ヴィクター・トレヴァーがラサ行きに同行するチベット人を紹介してくれた。ノルサン・サンボという男だ。
 水野雅士氏による原文の翻訳を見てみよう。『シャーロック・ホームズ、チベットへ行く』の25頁である。

「ひょっとして、サンボさん、あなたは衣類のご商売をしておられるのではないですか?」
「はい。反物と衣類を扱っております。トレヴァーさんからお聞きになったのですね?」
「ぼくはそんなことは言ってないよ、ノルサン」
「じゃ、どうしておわかりになったのですか?」
 彼の髪はぼさぼさで、無精髭を生やし、身なりにはほとんどかまった形跡がなかった。それにもかかわらず、衣類だけは生地のいいものを着ていたので彼は生地の良し悪しには目がきくが、みずからの衣装には頓着しない紺屋の白袴で、おまけに衣類のすそには別の種類の糸くずが、二、三本くっついていたことから衣類関係の仕事をしていることは明らかだった。……

 インドの奥地でもホームズの推理は冴えわたっている。ロンドンにいるのと変わらない。
 それにしても水野氏の翻訳は見事ですね。ぎこちない「翻訳調」は少しもない。まるで初めから日本語で書いたような自然な文章である。「紺屋の白袴」なんて、原文はどうなっているのだろう? like the shoemaker's wife who goes barefootのような英語が書いてあるのを、水野氏はきれいに意訳されたのだろう。翻訳家の端くれとして私も見習わなければ。
 
 このノルサン・サンボのほかに、英陸軍少尉ピーター・ニールセン、インド人キシェン・シンを伴って、ホームズは国境に向かう。彼は無事にラサにたどり着くことができただろうか? ポタラ宮を見ることができただろうか? 

(写真をクリックすると拡大します。)

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