« A Case of Identityの訳題 | トップページ | シャーロック・ホームズ対官僚 »

2006年11月29日 (水)

敬愛なる?ベートーヴェン

Top2_1_1

 第九誕生の裏に、耳の聞こえないベートーヴェンを支えた女性がいた。敬愛なるベートーヴェンというのですが。

 変だ。「敬愛するベートーヴェン」なら分かるけど。
 これは北朝鮮から始まった言い方でしょう。たとえば

南朝鮮のマスコミは、米国の核策動と関連して、問題解決の根本的な鍵が平壌にあり、米国の戦争遂行能力を一瞬のうちに麻痺させられる軍事戦略と領軍術、高度な対米戦略を体現される敬愛なる将軍様がいらっしゃる限り、朝鮮半島でいついかなることが起きて驚かされるかわからないので、心の準備をしっかりとしておくこと

全てのイルクンは、歴史的な6・15共同宣言を準備して下さり、祖国統一の転換的局面を開いて下さった敬愛なる将軍様の偉大さをよく理解し、将軍様の先軍領導を受け、祖国統一の歴史的偉業を成し遂げる闘争において、自己の全戦力と知恵を捧げなければならない

E98791e6ada3e697a5_1

 ものすごい。戦略情報研究所のXファイルという文書です。2006年5月31日付。詳しくはここ
 北朝鮮は漢字を廃止した。ところが大和言葉に当たる「コリア言葉」では用が足りないらしい。どうしても「漢語」(あるいは日本語)が必要なのだけれど、漢字の支えがないから使い方が滅茶苦茶になってしまったのだ。

 しかし朝鮮を笑ってばかりはおれないと思う。手紙の書き出しに使うDearの訳語に「親愛なる」というのがありますね。あれはちょっと怪しい。
 Dear Marylynなら「かわいい/いとしいマリリン」くらいでよろしいが、別にかわいくもいとしくもない場合もあるから仕方なく「親愛なる」という訳語をでっち上げたのでしょう。いつ頃から使い始めたのだろう?
 塩谷温の新字鑑を引いてみると親愛は「したしみいつくしむ」とあって「大学」から例文を引いている。明らかに動詞である。親愛スルは言えるだろうが親愛ナルはどうもインチキである。親密ナルならよろしい。敬愛や親愛だけでなく、○愛の形ではほとんど動詞になるはずである。遺愛 渇愛 割愛 求愛 溺愛 盲愛など。
 このあたりは漢文を引いて縦横に論じたいところだが、そんな教養はないのが遺憾である。
 ついでに、いつも気になっていることをもう一つ。
 Nondisclosureを何と訳しますか? 「不開示」か「非開示」か? 多数決では後者が多いと思うが、開示は動詞のはずである。「開示せず」である。「開示にあらず」なんてナンセンスだと思うのだけれど。
   こういう問題は高島俊男先生に質問してみたいものだが、週刊文春の連載も終わってしまったし、お元気にしておられるだろうか? 
 

|

« A Case of Identityの訳題 | トップページ | シャーロック・ホームズ対官僚 »

コメント

 わが意を得たり、の感があります。この映画の予告篇を何度か見たのですが、そのたびにおかしいなあ、と感じておりました。元を正せば「親愛なる」がそもそも日本語としておかしいのですね。
 ただ北朝鮮由来説は漠然と怪しいなあと思いますが。

投稿: あまカラ | 2006年11月30日 (木) 00時26分

題名を見たとたん気持ち悪くて映画を見たくなくなるような誤用ですが、
邦題を決める際に誰も指摘できる人がいなかったんでしょうかね。

投稿: うにん | 2006年12月24日 (日) 16時17分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/21109/4362347

この記事へのトラックバック一覧です: 敬愛なる?ベートーヴェン:

» 【試写】敬愛なるベートーヴェン [小確幸を探して]
  天才音楽家ベートーヴェンと、彼の女性コピスト(写譜師)アンナ の師弟関係を越えた魂の交流を描く。 病床のベートーヴェンのもとに向かうアンナに荒涼とした大地、森 の樹々、光のきらめきがかぶり音楽が響くオープニングは詩的な表 情を持ち期待させるのですが、肝心の「第九」完成、初演までに大 きな障害もなく物語は平坦すぎて拍子ぬけ。 これではいかんと例えば稀にみる変人が自分の上司になったらどう するかなどとアンナの立場を自分に変えつつ観ていたら、そのまま うたた寝、気がついたらエンドロールが流れていまし... [続きを読む]

受信: 2006年12月 7日 (木) 23時32分

» 敬愛なるベートーヴェン [映画鑑賞★日記・・・]
『COPYING BEETHOVEN』公開:2006/12/09(12/09鑑賞)製作国:イギリス/ハンガリー監督:アニエスカ・ホランド出演:エド・ハリス、ダイアン・クルーガー、マシュー・グード、ジョー・アンダーソンアンナ・ホルツ・・・アンナホルッ?穴掘る?いい話なのに最初に聞いた時、こ....... [続きを読む]

受信: 2006年12月11日 (月) 18時33分

» 『敬愛なるベートーヴェン』 [映像と音は言葉にできないけれど]
『戦場のアリア』に続き音楽関連映画に出演したダイアン・クルーガー。彼女演じるベートーヴェンの写譜を任されたアンナ・ホルツが主役となる映画です。 [続きを読む]

受信: 2006年12月12日 (火) 23時46分

» 『敬愛なるベートーヴェン』 [唐揚げ大好き!]
  『敬愛なるベートーヴェン』   ”第九”誕生の裏に、 耳の聞こえないベートーヴェンを支えた女性がいた。   師走の風物詩といえば第九でしょ。 で、月9の『のだめカンタービレ』でクラシック熱も上がってきている今日この頃、配給会社はニヤリとしたのではない... [続きを読む]

受信: 2006年12月17日 (日) 20時03分

» 「敬愛なるベートーベン」も正月全国拡大公開 [映画コンサルタント日記]
9日から全国64スクリーンで公開の始まりました「敬愛なるベートーベン」、土日興収 [続きを読む]

受信: 2006年12月17日 (日) 22時53分

» 敬愛なるベートーヴェン フーガを理解できなくても、第九には圧倒された。とても大胆な映画。 [もっきぃの映画館でみよう]
タイトル:敬愛なるベートーヴェン(原題 Copying Beethoven) 製作国:イギリス・ハンガリー ジャンル:伝記もの/2006年/104分 映画館:TOHO二条シネマズ(127席) 鑑賞日時:2006年12月8日 (土),12:30〜 70人ぐらい 私の満足度:70%  オススメ度:60% 主演エド・ハリスと聞いて、思い出すのはビューティフル・マインドの スパイ役。怖さを感じさせる鋭い目つきでの怪演は、まさにピッタリ。 音�... [続きを読む]

受信: 2006年12月18日 (月) 03時25分

» 【劇場鑑賞142】敬愛なるベートーヴェン(Copying Beethoven) [ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!]
“第九”誕生の裏に、 耳の聴こえないベートーヴェンを支えた女性がいた。 孤高の音楽家ベートーヴェン、歴史に隠されたもう一つの物語。 [続きを読む]

受信: 2007年1月 4日 (木) 22時14分

» 日本軍は軍備を拡張すべきではないのか? [pixie酒田市民#0619のブログ]
mixiで日本の自衛隊は能力、規模共に大きいという意見を見てしまった何を寝言を言っているんだろうと何度も言っておりますが北朝鮮が日本に核ミサイルを撃つ可能性は高まりました中国共産党は相変わらず軍拡を続けて東トルキスタン、法輪功への弾圧も現在進...... [続きを読む]

受信: 2007年3月21日 (水) 22時47分

» アメリカと北朝鮮は裏でつながってる [右派社民党公式ブログ]
現在では、ロックフェラーの別働隊である統一教会が、金王朝とのパイプ役になって、体制延命のために支援をしている。ピョンヤンには数千名の統一信者が常駐し、麻薬事業に従事していると思われる。文鮮明は、金日成と義兄弟の契りを交わし、共和国の英雄として遇されて...... [続きを読む]

受信: 2007年3月23日 (金) 14時56分

« A Case of Identityの訳題 | トップページ | シャーロック・ホームズ対官僚 »