至近距離で見た有名人(3) ドクちゃん
ベトちゃんとドクちゃんは1981年2月25日にベトナムで生まれた。二人は下半身がつながって生まれた双子の兄弟である。結合双生児という。アメリカ軍が大量に散布した枯葉剤に含まれるダイオキシンの影響であると言われている。
1988年、ベトちゃんが意識不明の重体となり、そのままでは二人とも死んでしまうので、ホーチミン市の病院で分離手術が行われた。
手術は成功し、ドクちゃんは自由に歩けるようになったが、ベトちゃんは脳障害を抱え、今も寝たきりの状態である。
ドクちゃんは1994年7月に来日し、三重大学医学部で検査を受けてベトナムへ帰った。このとき、名古屋で新幹線から津行きの近鉄特急に乗換えるシーンをテレビで見た記憶がある。
1996年のはじめだったと思う。私は三重大学医学部病院に入院していた。手術のあと体力も回復してきたので、点滴を引張ったまま1階の購買部まで降りて行った。すると、自動販売機の前に何だか見たことのあるような男の子がいる。誰だろう? よく見ると、ドクちゃんではないか。また三重大に来たとは知らなかった。この前テレビで見たときより少し大きくなったみたいだ。日本の中学一年生くらいの感じである。
私は4階の第二外科に入院していた。ドクちゃんは6階の第一外科らしい。それからときどき見かけるようになった。日本人の小父さんと何やら楽しそうに日本語で話しているときもあった。
私は医療費を免除されていたくらいだから、かなりの重病だった。新しい患者が入ってくると、尋ねることにしていた。「おたく、何の病気? ふーん、胆石か。僕は膵炎でねえ。手術に20時間かかりましたよ」と言うと、たいていの者はヒェーと恐れ入ってしまう。ちょっとした牢名主気分であった。
しかし重病ということなら、ドクちゃんはこちらとは比べものにならない重病なのだ。それが外国に一人で来てニコニコしているなんて、何と勇気のある子だろう。
あれから10年たって、私はどうやらふつうの生活を取り戻している。ドクちゃんは12月16日に結婚したというではないか。おめでとう。
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