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2006年12月 5日 (火)

コナン・ドイルとボディビル

 このころのことで今でも愉快な思い出となっている一つの追憶がある。私は「筋肉づくり」をするために例の強人ザンドウ氏の指導を受け、氏と親しくなった。

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1901年にザンドウ氏はイギリスの傷病兵のために何かしようと思いたち、アルバート・ホールでの「筋肉コンテスト」を発表した。まず彼自身がお手本を示し、つづいて幾人かの選手が力と筋肉の見事さを示して賞を争うわけだった。賞は三個で、高さ二フィートの金製の立像、銀の複製、同じく銅賞だった。ザンドウは彫刻家のローズと私にジャッジを頼み、自らはレフリーをつとめた。
 これは意外な評判となり、アルバート・ホールは満員だった。出場選手は八十人にのぼり、ひょうのような皮膚をまる出しにして台の上に立つ。ローズと私は彼らを十人ずつ並ばせ、その中から一人二人と選り抜き、しまいに六人だけに絞った。それからが大変だった。どれも見事に発達した筋肉の持ち主だったからである。結局賞を三個増して三人に与え、後の三人にも像を与えることになったが、三個の像はそれぞれ値段が非常に違うのだから、その順位を決めるのは大変むつかしいことだった。三人ともすばらしい体つきをしていたが、よく見るとうち一人はやや不体裁であり、一人は背が少し低い。そこで私たちは真ん中の一人、ランカシャから来ているマーリという若者に、高価な金像を授けることにした。……コナン・ドイル『わが思い出と冒険』新潮文庫p.255)

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 これがたぶん世界ではじめてのボディビル・コンテストでしょう。「例の強人ザンドウ氏」というのはEugen Sandow(1867?-1925)。本名をフリードリヒ・ヴィルヘルム・ミュラーというドイツ人。オイゲン・ザンドウと読むのが正しいのでしょうが、英米で活躍したので、ユージン・サンドウと呼ぶことが多いようです。
 ヨーロッパ各地で力業を見せてまわり大人気を呼んだ。

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 それまでにも力業を見せ物にする芸人はかなりいた。(上の写真のような凄いことはできなかっただろうけれど。一体全部で何キロになるだろう?)フェデリコ・フェリーニの『道』でアンソニー・クインがやった役などもその一人である。彼はジュリエッタ・マシーナをいじめる悪い奴であった。

 ザンドウのユニークなところは、力だけでなく「筋肉美」を売り物にしたこと、組織的なトレーニング法を開発したことであった。彼はボディビルの元祖だった。写真はかなり残っていますが、ポーズもイチジクの葉っぱも、いま見るとちょっと気味が悪い。

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もっと写真を見たい人はここ

 コナン・ドイルはザンドウの指導でトレーニングに励んだ。もともと筋骨隆々だったから40歳を過ぎてからでもかなり効果があったらしい。ヘスキス・ピアソンのドイル伝によると、彼はボディビルのおかげで一命を取り留めたのだという。
 あるときドイルはオープンカーに乗っていて、土手に乗り上げて転覆してしまった。重さ1トンの車の下敷きになったが、助けが来るまで持ちこたえられたのは日頃のトレーニングのおかげだったという。

 ザンドウの著書は英語ならば現在も入手可能です。下記のうち、Life Is Movement or the Physical Reconstruction and Regeneration of the Peopleという本はザンドウとコナン・ドイルの共著である。どんな本か、取り寄せて読んでみるつもり。シュワちゃんなどとは一味違うザンドウの肉体美を鑑賞したい人はSandow the Magnificentがお勧め。

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