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2007年3月26日 (月)

入学試験について(3)

『国家の品格』の藤原正彦先生は、ケンブリッジ大学で在外研究をしたときに、クィーンズ・カレッジの数学と物理専攻課程の入学試験を手伝ったという。

『遙かなるケンブリッジ』新潮文庫版pp.207-8

面接は各人につき三十分ずつ行われた。合否はこの面接と、内申書やAテストと呼ばれる国家試験の結果を半々に見て決定する。この大学で最重視されるのは、自ら学んで行く意欲と能力である。質問内容は専門的なことから読書傾向や友人関係にまで及んだ。教科書に出ていないことを臨機応変に聞いた。趣味がヴァイオリンと言った学生には、
「ヴァイオリンが箱形でないのは何故か」
 と問うたし、卓球部の生徒には
「ピンポンをカットすると何故曲がるのか」
 などと聞いた。物理に疎い私はよく分からなかったが、分かったような顔をして聞いていた。数学では基本をよく理解していない者も散見されたが、どの内申書にも抜群と記してあったのは、日本と同じでおかしかった。ある女生徒が深紅のロングドレスに深紅の口紅をつけ、爪を赤くしてきたのには驚いた。香水までつけて来たので、私は何を聞いてよいのか分からなくなりそうだった。
 一人だけ凄いのがいた。まだ十六歳のインド人だった。葬式帰りのような、黒スーツに黒ネクタイだったが、どんな質問にも的確に答えた。少し困らせてやろうと、やや意地悪な問題を出したら、ものの十秒位で解いてしまった。ノーベル賞を数十人も出す大学にはこんな生徒が来るのか、と感心していたら、グリーン博士が、「やったぜ」とでも言いたげに私に目配せした。……

 藤原先生はお茶の水女子大の教授だったはずだ。
「ケンブリッジは偉い」と感心しているだけでは困りますね。何故同じことが日本ではできないのか、を考えてもらいたいものだ。
 お茶大の数学科の入試で面接を行い、「質問は専門的なことから読書傾向や友人関係にまで及んだ。教科書に出ていないことを臨機応変に聞いた」なんてことをしたら、どれだけ非難を浴びるか?
「ヴァイオリンが箱形でないのは何故か?」なんて、藤原先生もよく分からないというのだから、「正解」を求めているのではないだろう。自分で考える力があるかどうかを見ているのだろう。ペーパーテストでは計れない学力が口述試験ならば分かるということなのだろう。
 日本では、センター試験と偏差値のせいで、馬鹿でも万遍なく点数がとれる奴が合格する。ピカソが18歳の日本人になって東京芸大を受験しに来たら、英語や数学ができないからといって落としてしまうだろう。「自ら学んで行く意欲と能力」なんて重視されないのだ。

 センター試験を廃止しろ、と私はとなえているのだけれど、藤原先生のような人にこそ、これを言ってもらいたいものだ。

大学入試センター
所長挨拶
P_1
  大学入試センターは、昭和52年5月に国の機関として設置され、平成13年4月独立行政法人となりました。当センターは、大学が行う入学試験のうち、共同で実施することとする試験に関する業務を行い、入学者選抜の改善を図り、大学・高等学校等の教育の振興に寄与することを目指しています。

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