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2007年4月26日 (木)

火掻き棒補説(2)

「言うことを言えばすぐ出て行く。いいか、余計なお節介をするな。娘がここに来たのは分かっておる。跡をつけてきたからな。わしと事を構えるつもりならば、危険は覚悟しろ。見ておれ」ロイロット博士はさっと踏み出すと火掻き棒を掴み、日焼けした大きな手でぐいとねじ曲げた。
「わしに掴まれんように気をつけるのだな」ロイロット博士はそうわめくと、ねじ曲げた火掻き棒を暖炉に投げ込んで、すたすたと部屋を出て行った。
「なかなかの愛嬌者だねえ。僕はあれほどでかくはないが、もう少し居てくれたら、握力じゃ引けを取らないことを見せてやれたのに」ホームズはそう言って鉄の火掻き棒を拾い上げ、ぐいと力をいれて元通りまっすぐに伸ばした。

 もちろん『まだらの紐』ですね。

わしに掴まれんように気をつけるのだな。
See that you keep yourself out of my grip.

握力じゃ引けを取らない。
My grip was not much more feeble than his own.

 英語ではgripという単語を使っている。火掻き棒を曲げたり伸ばしたりするのは「掴む力、握力」の働きによるというのだ。
 ロイロット博士は大男で(シルクハットが鴨居につくくらい)、大変な力持ちだった。義理の娘ヘレン・ストーナー嬢によると、村の鍛冶屋を橋の上から欄干越しに川へ放り込んだという。

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 全身の力では体の大きなロイロット博士の方が強いに決まっているが、握力だけならば痩身のホームズだって負けないというのだ。この場合は、どうも英語の方が日本語より物事の捉え方が具体的できめ細かいようだ。

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 まだらの紐は1883年(明治16年)のことであるが、そのころの日本では、石炭ストーブも普及していなかったから、火掻き棒を曲げてみせるというようなことはあまりしなかった。力自慢といえば「力石」を持ち上げるくらいでしょう。

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 この力石は大阪市の保利神社にあるもので、重さ153kg。原田秀吉という人が持ち上げたのだそうです。

 最近ではフライパン曲げというのがあるそうです。写真は2005年JPCマッスルマニアジャパンと同時に行われたストロングマン・コンテストで、優勝した金繁優さんが「29cmのテフロン加工されたフライパン」を曲げているところ。30秒でどれだけ小さく曲げることができるかを競うのだそうです。

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» 「まだらの紐」 - The Speckled Band [日々是徒然 in iza]
「まだら、まだらの紐、、」と言う謎の言葉を残して亡くなった一人の女性、依頼人はその女性の妹さんとなります。 なお正典では、この依頼人は亡くなった姉と双子の姉妹となっていますが、グラナダ版では省かれているようです。 他にも、正典ではホームズが話しているコトのうち、いくつかをワトソン博士に語らせていたりと、 ホームズとワトソンを対等の位置付けにしようとしている、そんなグラナダ版スタッフの想いが垣間見えたりも。 さて、この話は密室トリックの古典の代表作の一つでもあり、また、著者・ドイル氏自身もお気に入りの... [続きを読む]

受信: 2007年5月20日 (日) 23時38分

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