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2007年4月28日 (土)

芥川龍之介、漱石を語る

 先生はよく銭湯に出かけられた。ある日先生は流し場で石鹸を使っていると、はたの上り湯のところに一人の頑丈な男がどんどん湯を浴びながら、後ろにかがんでいる先生の頭の上にその飛沫を遠慮会釈もなく浴びせかけた。――根がかんしゃく持ちの先生は一途にむっと腹が立ったのででかい声を張り上げて「馬鹿野郎」とどなりつけた。――どなりつけたまではよかったが、それと同時にこの男が自分に手向かってきたらどうしようと思うと、急に怖ろしくなって少しうろたえたそうですが、先生のえらい権幕におそれたものかその男が、素直な声で「すみません」と謝った……「おかげでやっと助かったよ」と先生はほんとうに助かったように述懐されました。

 ある人が先生に、「先生のような方でも女に惚れるようなことがありますか」ときくと、先生はしばらく無言でその人をにらめつけていたが「あばただと思って馬鹿にするな」と言ったということをごく最近ある友達からききました。

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