火掻き棒補説
火掻き棒とか棍棒とか、どうも物騒でいけない。ワトソンが火掻き棒を平和利用したシーンを見てみよう。
「とっても重いわ」彼女はそれを持ち上げようとした。「箱だけでも相当の値打ちがありそうですね。鍵はどこですの?」
「スモールがテムズ川に捨ててしまったのです。フォレスター夫人の火掻き棒を借りなくては」
箱の表の分厚く幅広い掛金は仏陀の座像をかたどったものだ。その下に火掻き棒の端を突っ込んでこじ開けた。掛金はパチンと外れた。震える手で蓋を開ける。二人は驚きに目を丸くして立ちすくんだ。箱は空っぽだったのだ!
ワトソンはThank God! と叫んだ。
「なぜ、そうおっしゃいますの?」
(ワトソンが理由を説明する。)
「それでしたら、私もThank God! と申しますわ」とささやいたメアリーをワトソンは抱き寄せた。めでたし、めでたし。『四人の署名』でした。
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