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2007年6月 6日 (水)

ホームズの木刀術(5)

 ドイツの学生はMensurというものをして、これは辞書に決闘と書いてあるけれども、実は決闘Duellとは違うという話であった。英語でもドイツ語でも辞書が正しいとは限らない。
 Mensurとは何かというと

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 1900年ごろの学生組合のMensurを描いた絵です。
 見れば分かるように、まず剣が違う。サーベルではなく突き専用の剣で大きな鍔がついている。Korbshlaegerという剣である。胴には革製の防具、その下に鎖帷子を着込んでいる。首も厳重に保護している。眼はゴーグルで被っている。二人とも直立不動である。フットワークなどは使わない。
 Mensurというのは決闘ではない。
 決闘DuellはSatisfaktion(英語satisfaction名誉回復)が目的である。喧嘩を剣で解決しようとするのだから、一方が負傷するまではやめない。場合によっては死ぬ危険もあるが、やむを得ないのだ。
 これに対して、Mensurはスポーツの性格が強い。剣を構えて相対している二人は互いに恨みがあるわけではない。決闘とよく似ているけれども決闘ではなく、「肝試し」なのだ。双方防具を着け、その場に直立してフットワークは使わず、剣をもった手だけを動かして叩き合う。だから、命に関わるような大怪我は少なかった。
 もちろん剣を使うのだから、負傷は免れなかった。どうなったかというと、たとえば

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 この学生は頭に怪我をしたらしい。のぞき込んでいる無帽の学生は左頬に「名誉の負傷」がある。日本ならばヤクザの印なのに、ドイツというのは乱暴な国ですね。
 1871年(ドイツ帝国の成立)から1914年までに、ドイツではおよそ1万2000件のMensuren(複数)が行われたという。これとは別に、サーベルによる決闘もあった(こちらはそれほど多くはなかった)。
 ナチスが政権を取ると、決闘は完全に禁止された。Mensurは禁止されなかったが、学生組合が解散させられたので廃れてしまった。
 第二次大戦後にはどうなったか。1951年になってゲッティンゲン大学でMensurを戦後はじめて再開した学生が傷害罪で逮捕された。しかし、「双方同意の上での傷害は傷害罪を構成しないから無罪」という判決が出た。1958年にはベルリン自由大学の学生がMensurを行って退学処分を受けたが、裁判でこの処分が取り消された。だから、Mensurは合法ということになって、現在でも行われているらしい(詳しいことは知りません)。
 どうも怖ろしい国ですね。
 サーベルによる決闘の話であったが、逸れてしまった。続きはまた。

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