ラッセル自伝の誤訳(4)

(母とラッセル)
私はM.マッツィーニの崇拝者ではなく、彼の性格と主義主張は全く嫌いであり、憎悪しています(注:M は G の誤植だろうか? 即ちマッツィーニというのは、ジュゼッペ・マッツィーニ(Giuseppe Mazzini, 1805-1872)のことだろうか、それとも別人だろうか?)。その上、私が占めている公的な地位を考えれば、彼との文通の橋渡し役をつとめることはできません。
これは実に珍妙な誤解である。MはGの誤植だろうかだって!
ラッセルのお母さんが手紙を出そうとしたのは、たしかにイタリアの愛国者ジュゼッペ・マッツィーニです。
Mは「ムッシュー・マッツィーニ」のMに決まっているじゃないか。そんなことも分からないの? いったい英語の本を読んだことがあるのだろうか?
マッツィーニならイタリア人だから「シニョール・マッツィーニ」のはずだ? それはそうですが、当時の英国人というのはそういう細かい区別はしないのです。
「要するに外人だろう。カエルを食べる変な連中だろう。同じだ」というのでムッシューで済ませたのだ。(さすがにドイツ人の場合はムッシュー呼ばわりもできないので、ヘル・ハイデッガーというような呼び方をした。)
外国で大英帝国を代表する役割を果たしている私に、わけの分からん外人、しかも過激派だというじゃありませんか、そんな奴との仲介をしてくれというのはどういうことです? あなたがラッセル伯爵家のお嫁さんだからまだ我慢しているんですよ――というのがこの領事の言いたかったことだろう。
しかし、これはまあ軽微な誤訳でしょう。
もっと本質的な誤訳が控えています。(続く)
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