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2007年8月21日 (火)

「論座」の翻訳特集

「論座」の9月号が 深化する「翻訳」という特集をしている。

わからないのは読者が悪いのか。
それとも、訳者の技術が未熟なのか。
「難解さ」をありがたがる時代はもう終わった――

 これは編集部製のキャッチコピー。今ごろ何を言ってるの。ちょっと幼稚だね。
 しかし寄稿者の面子は揃っていて、面白い。私がこのブログで取り上げたのと重なるところが多くて我が意を得たりである。

 柳父章氏のインタビュー
 よくテレビのニュースなどで、容疑者のことを「」といって、被害者のことを「女性」といいますね。歴史のある言葉は、良い意味も悪い意味も持ち合わせているからこそ良い言葉なんです。「あれはあいつの女だ」なんて使われ方があるから悪いと思われているのでしょうけれど、「女」は伝統的な言葉で「女性」は翻訳語です。……(シャーロック・ホームズとあの女(3)女、婦人、女性参照)

 別宮貞徳氏のインタビュー、国富論の訳者山岡洋一氏のインタビューもある。

 池上嘉彦氏が「言語学は翻訳の役に立つか」で雪国の英訳を論じている。

 柳瀬尚紀氏(デレッキとは何ですか? 参照)が村上陽一郎氏の問いに答えて、「(文化的背景は)笑いに限っては99%伝えきれます」という。どうもこの人は怪物だね。ユリシーズは買っただけでまだ読んでないけれど、なぜスティーブン・デッダラス(ディーダラスではなく)かが分かっただけでも儲けものだった。柳瀬先生曰く、グローバルは「愚陋張る」だって。

 中条省平氏が村上春樹の翻訳を論じている。チャンドラーのロング・グッドバイの村上訳を清水俊二訳と比べているところが面白い。ぜひ読んでみよう。

 加藤晴久氏は、誤訳迷訳欠陥翻訳を出している出版社の「製造物責任」を問うている。
「いつも言っていることだが、編集者は翻訳書の最初の読者である。編集者が原稿なり校正刷りなりを読んで、理解できない箇所、奇妙な日本語の箇所は、十中八九、誤訳である。相手が大学教授だろうが何だろうが見直しを求めるべきである。これは、翻訳書を買う読者に対する職業倫理上の最低限に義務である」

 まったくその通り。ここで我田引水の宣伝をさせてもらう。
 新評論の敏腕女性編集者Yさんは、この職業倫理に忠実な人だ。ヴェド・メータの『ガンディーと使徒たち』に誤訳が少ない(皆無とは申しません)のは、まったくYさんのおかげである。厳しく間違いを指摘してくれたからだ。

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