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2008年2月27日 (水)

昔の英国の入学試験(2)

 コナン・ドイルは1875年、ガンジーの15年前に大学入学資格試験に合格している。
 ヘスキス・ピアソンのドイル伝では

 In his last year he edited the College magazine, and at the end of his time amazed everyone by taking honours in the London Matriculation.

  ストーニーハースト校の最終学年に彼は校内誌を編集し、最後にthe London Matriculationで優等の成績を取ってみんなを驚かせた。

 このthe London Matriculationは、ガンジーの伝記に出てきたa London University matriculationと同じものだろう。

  ジョン・ディクスン・カーのコナン・ドイル伝

……彼は、けんめいに身を震わせながら、他の十三人の少年といっしょに、ロンドン大学の試験を受けた。その結果をつつみこんだ小包郵便が、ものすごく暑い七月の一日、ロンドンから到着して、校長室へ運びこまれた。
……受験した十四人のうち十三人がパスし、ストーニーハーストはじまって以来の好成績だった……
……アーサーは、単にパスしたばかりでなく、実に優秀な成績でパスしたのである。

 大久保康雄氏は「ロンドン大学の試験」と訳している。
 しかし、ロンドン大学の入学試験ではない。ドイルは合格してエディンバラ大学に入学したのだから。

 ガンジーの場合も、合格はしたけれども大学に入学はしなかった。英語の力をつけるために、力試しに受けただけである。ガンジーはインナー・テンプル法曹学院に入学した。こちらは無試験である。法律の授業はなかった。学生の義務は授業料を払うことのほかに、1年に24回、学院の食堂で夕食を取ることだけだった。入学してから3年後に弁護士資格試験があったが、これはごく簡単なもので、よほどの馬鹿でなければ合格した。
 だから、ガンジーは暇を持て余していた。社交ダンスやバイオリンを習ったり、菜食主義を広める運動をしたり、英国人女性に誘惑されかかったりして、3年を過ごした。彼はヒンズー教の聖典、バガヴァット・ギーターを初めて(英訳で)読んだ。ガンジーが「マハトマ」への道を歩み始めるのは、南アフリカに渡ってからである。このころは、まだボンヤリした青年である。
 
  ガンジーが1890年に合格したときは、ラテン語、フランス語、物理(「光と熱」)の3科目だった。(なぜ数学は不要?)
 コナン・ドイルが1875年に合格したときの科目は、カーやピアソンによる伝記には書いてない。

 ロンドン(ユニバーシティ)マトリキュレーションは、だいたい「大学入学資格試験」と訳しておけばよいだろう。要するに

(1)競争試験ではなく資格試験
(2)ロンドン大学が出題し採点した。
(3)オックスフォードとケンブリッジ以外の大学の受験生用

 コナン・ドイルたちはロンドンまでで受験に出かけたのではなく、スコットランドのストーニーハースト校で試験を受け、答案をロンドン大学に送ったのだろう。
 カーのドイル伝で「その結果をつつみこんだ小包郵便」と書いているのは、採点した答案を小包で送ってきたということだ。
 当時は現在のセンター試験のような馬鹿な制度(廃止しろ!)はなかった。試験は完全な「記述式」だったはずだ。それでもロンドン大学で全国の試験ができたのは、志願者が少なかったからだろう。
 志願者が多くて競争試験になったのは、陸軍士官学校と海軍兵学校だった。そのための予備校がビジネスとして成立していたことは、モリアーティ元教授の職業(1)--(5)に書きました。

 1875年は明治8年である。このころ日本にはもちろん大学入試などなかった。大学の設立は明治10年になってからである。
 1890年は明治23年である。この年、夏目金之助(漱石)は帝国大学に入学している。(東京帝国大学と書くのはおかしい。大学はまだ一つしかない。)どういう試験を受けたか、漱石の伝記を読んでも書いてあるのを見たことがない。

 むかしはのんびりしていてよかった、ということです。

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