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2008年3月10日 (月)

ホームズとワトソンの拳銃(3)

『緋色の研究』も佳境に入って、ホームズの出した新聞広告

今朝ブリクストン通りのホワイト・ハート酒場とホランド・グローブの間にて金のカマボコ型結婚指輪拾得。ベーカー街221Bのワトソン博士まで申し出られたし。夜8時から9時。

 これで犯人をおびき出そうというのだった。それで
ホームズ「……来るさ。一時間以内に必ず来るよ」
ワトソン「来たら?」
ホ「そのときはすっかり僕に任せとくさ。君、武器はあるかい?」
ワ「昔の軍用拳銃と弾が少々ある」
ホ「じゃ、掃除して弾を込めておきたまえ。向こうは必死になって来るだろう。それは僕としても油断させておいて捕まえるつもりだけれど、万一の場合には備えておいた方がいい」
 ワトソンは寝室へ行って、言われたとおり昔の軍用制式拳銃(service revolver)を取り出し、掃除して弾を込めた。

 大英帝国陸軍の制式拳銃ならば、何年に何が用いられていたか分かっている。ワトソンが従軍したころは、アダムズ1872年型マークIIIモデルが制式だった。これは0.45口径、6連発のダブルアクション、銃身長は6インチである。黒色火薬を用いた。

Adams1872mkiii3

 1880年8月からエンフィールド・マークIモデル(0.476口径)が導入される。しかし、ワトソンは1880年6月27日のマイワンの戦いで負傷して、以後は戦場に出ていないから、新しい拳銃を手にする機会はなかった。
 将校(軍医を含む)の装備は自弁が原則であるから、帰国するときに拳銃と何発か残った弾を持って帰ったのである。
 この制式拳銃(service revolver)を仕舞い込んであったのを取り出したのだ。もっとも『緋色の研究』では撃たなくてすんだ。
 ワトソンが確かに同じ拳銃を用いた機会がもう一度ある。

「今夜のささやかな冒険の成功を祈って、乾杯。さあ、出発だ。ワトソン、ピストルは持っているかい?」
「昔の軍用拳銃(service-revolver) が、デスクにある」
「持って行き給え。支度をして行くべきだ。玄関に馬車が来ているな。6時半に頼んでおいたのだ」

 このときの面子は、ホームズとワトソンのほかにアセルニー・ジョーンズだった。もちろん『四人の署名』の事件で、このときは実際にワトソンの0.45口径が火を噴いたのだった。これは1888年の事件で、このあとワトソンはメアリー・モースタン嬢と結婚したのだった。
 1881年と1888年にワトソンが持っていたのは陸軍の古い制式拳銃であった。それならば1883年の『まだらの紐』のときも当然同じ制式拳銃だったかというと、必ずしもそうは言い切れないのである。(続く)

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