ホームズとワトソンの拳銃(4)
『まだらの紐』では、ホームズがこう言うのだった。
I should be very much obliged if you would slip your revolver into your pocket. An Eley’s No. 2 is an excellent argument with gentlemen who can twist steel pokers into knots.
ポケットにピストルを忍ばせていってくれるとありがたいな。イーリーの2番なら、鋼鉄の火掻き棒をひん曲げてしまう相手にも、説得力があるだろう。
ワトソンが持っているアダムズ1872年型マークIIIモデルはどういう拳銃か? 0.45口径、6連発であるが、重さは弾を込めないで1.1kg、長さは28.6cmもあるのだ。
これをポケットに入れて(あとは歯ブラシだけ持って)サリー州まで行けばよろしい、なんてことをホームズが言うか?
ワトソンは古い軍用拳銃のほかに、もう少し小型の拳銃を手に入れていて、そのことをホームズが知っている、と考えるのが自然だろう。
その小型の拳銃を仮にイーリーの2番という弾薬の名前で呼んでいるのだ。
イーリーの2番というのはどういう弾薬か? これを調べればよろしい。
ところが調べてみると、1880年代のイーリー社のカタログにNo.2という拳銃用の弾薬はない----これを自分で発見したのなら偉いのだけれど、そうではない。調べた人は別にいて、私はそれを見ただけです。Stanton O. Bergというアメリカ人が
THE FIREARMS - SAFETIES of SHERLOCKIAN - VICTORIAN LONDONを書いている。http://hometown.aol.com/forensicb/Holmes1.html
このBerg氏によると、ウェブリー社にNo.2という拳銃があり、これがイーリー社の弾薬を使う。0.38口径と0.45口径があり、銃身は2インチと短い。
この「ウェブリーの2番」を、やや不正確であるが「イーリーの2番」と呼んだのではないか、というのがBerg氏の意見である。これなら確かにポケットに忍ばせて行くことができる。
ウェブリー社は軍用拳銃のメーカーとしても有名で、同社のマークVIリボルバーは実に1887年から1963年まで英陸軍の制式だった。(まだ何回か続きます。「愛国的頭文字」にも触れる必要があるし)
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