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2008年5月31日 (土)

柔道か柔術か(21)

「柔道か柔術か」の最近の記事は、http://ejmas.com/jalt/jaltart_Noble_1000.htm
を参考にして書いています。
 上記のサイトでは100年前の英国の新聞や雑誌を引用している。柔術家やレスラーが書いた本も挙げてある。
 マルクスみたいにブリティッシュミュージアムへ通って文献調べをすれば「柔術とレスリング」について画期的なモノグラフが書けるのだけれど。
 まあそんなことを言っても仕方がないか。
 上のサイトで一番よく引用しているのはThe Sporting Lifeという雑誌である。前に挙げた

パラゴン・バラエティー劇場
マイルエンド街
TO-NITE TO-NITE TO-NITE
アポロ提供、特別出演
日本人レスラー
ユキオ・タニ

 という広告はこのスポーティングライフ誌の1904年12月号に採録されている。

 次の記述もスポーティングライフ誌に基づいている(残念ながら何月号かが書いてない)。

 In 1904 he did beat Jimmy Mellor in a £100 match for the lightweight wrestling championship, catch-as-catch-can style.
 Mellor was Britain's best lightweight, and claimed the world's championship. So this victory was a terrific performance by Tani, as the newspapers of the time recognised. The Sporting Life praised "a thoroughly genuine sporting match," and then going on to say, "The little Jap showed what a wonder he is by beating the Englishman at his own game. Two falls to one was the decision, though the fall given against Tani was questioned by many."

 1904年にタニは、ジミー・メラーを相手に百ポンド懸賞試合をして勝っている。これはライト級レスリング選手権をかけて、キャッチ・アズ・キャッチ・キャン・スタイルで試合をしたのだ。
 メラーはライト級では当時英国一のレスラーで、世界チャンピオンを名乗っていた。だからこの勝利はタニには大変な偉業で、当時のマスコミもこれを認めた。スポーティングライフ誌は「まことにスポーツマンらしい試合だった」と賞賛した。続いてこう書いている。「小さなジャップは相手のイギリス人の得意分野に踏み込んで勝って見せた。実に感服の至りだ。タニは2フォール対1フォールで勝ったのだが、タニに対するフォールは成立していないのではないかと言う者が多かった」

「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」が、フォールで勝負をつける、関節技なしのレスリングで、ほぼフリースタイルと同じだったことがうかがえるはずだ。
 ジョージ・ハッケンシュミットが1902年にヨーロッパ大陸から英国に渡ってきて、グレコローマンからフリースタイルに切り替えた――ということを前に書きました。英語では「フリースタイル」をcatch-as-catch-canと書いてあったのだ。
 本当ならば、この英語の用法を百年前の雑誌を手に取って確かめる必要がある。文献調べをしたいというのは、そのためだ。
 しかし、次のように考えてみることはまずできるだろう。

(1)タニはプロレスラーと戦って連戦連勝した。
(2)プロレスの第一人者、ハッケンシュミットはタニの挑戦を避けた。
(3)ハッケンシュミットを含むプロレスラーのスタイルは「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」だった。
(4)キャッチ・アズ・キャッチ・キャンには関節技などのサブミッションがなかった。

 仮に「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」についてウィキペディアの記述が正しいとすれば、スープレックスなどの投げ技も関節技もできる、カール・ゴッチみたいなレスラーが18世紀ごろからいたことになる。

20070729

 ところが実際はハッケンシュミットでさえタニを恐れたのは、そもそも関節技や絞め技など、サブミッションを知らなかったからだ。
 どうでしょう? 
 (続く)

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