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2008年7月29日 (火)

トスカ枢機卿補遺(2)

 カトリック教会の首長は英語ならばPopeである。Popeは「法王」でなく「教皇」と訳するのが正しい。
 平凡社世界大百科事典で「法王」を引いてみると

(1)釈迦(仏陀)の尊称。(2)766年(天平神護2),称徳天皇が僧道鏡に授けた位。法皇とも書く。(3)法皇に同じ。(4)ローマ法王(教皇)のこと。

 なるほど。「法」はやはり「仏法」をあらわすのでしょうね。お釈迦さんや道鏡や後白河法皇などと混同されては、カトリック教会としては迷惑だろう。

 教皇庁のあるバチカン市国は、公文書での呼称を法王から教皇に変えて欲しいと要求しているが、日本政府が聞き入れないらしい。
 各国の首長名を日本語でどう呼ぶかは、一応先方の了解を得て決める。「お宅は酋長ですか、大統領ですか、王ですか、皇帝ですか、国家主席ですか」と尋ねるのだ。
 バチカン市国は、前には法王でよろしいと答えたようで、近年になって教皇に変えて欲しいというのに対して、日本政府は「前は法王で結構とおっしゃったではありませんか。一度決めたものをむやみに変更はできません。お宅だけ特別扱いはできません」という態度のようだ。
 ここは先方の言うように変えてあげたらどうだろう。キリスト教の用語を日本語に訳するのは難しいのだ。仏教用語と紛らわしくないようにしなければならない。

Popeは教皇
cardinalは枢機卿
bishopは、むかしは「僧正」と訳することもあったけれど、これは仏教用語だ。いまは「司教」と訳する。司教は、たとえば日本なら16(全世界では2500)ある司教区を監督する職である。
 ふつうの神父さんはFather Brownのように呼ぶか、単にFatherと呼ぶ。職名としては司祭priestである。これはプロテスタントの牧師pastorと混同してはいけない。
 神父のうちの偉い人にはMonsignorという敬称がつくことがある。『シャーロック・ホームズ文献の研究』のロナルド・ノックスは、Monsignor Knoxと呼ばれることが多い。私は「猊下と呼んではおかしい」と書いたけれども、そうでもないらしい。猊下は本来は仏教用語のはずだが、カトリックの高位聖職者の敬称に使っても構わないらしい。枢機卿や司教には猊下をつけるし、司教ほどではないけれども偉い神父でMonsignorがついている人もノックス猊下のように呼んでよいようだ。
 グレアム・グリーンにMonsignor Quixoteという小説がある。現代のスペインの田舎町にドンキホーテの子孫であるキホーテ神父が住んでいて、という話である。この人がひょんなことからMonsignorの称号をもらい、それがきっかけで共産党員の元町長サンチョをお供に連れて、愛車ロシナンテ号でスペイン一周の旅に出るのである。
 翻訳は『キホーテ神父』という題になっている。猊下はやはり違和感があったのでしょうね。本文でキホーテ神父が"Monsignor!"と呼びかけられるシーンがあった。そこはどう訳してあるのだろう?

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コメント

枢機卿は「すうきけい」と読むのが正しいのに「すうききょう」と読む人が多いですね。どちらでもいいのかな。

投稿: 土屋朋之 | 2008年7月29日 (火) 22時55分

僕もすうきけいだと思っていましたが、すうききょうと振仮名してあるのが結構ありますね。どっちだろう? 次はPopeよりもっと大物をどう訳するかです。

投稿: 三十郎 | 2008年7月30日 (水) 00時37分

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