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2008年9月26日 (金)

シャーロック・ホームズの来日(2)

 1925年以降に、明智小五郎がシャーロック・ホームズに来日を要請したことがある。しかし、ホームズはこのときは来なかった。「私も歳だし、リューマチもあるので」と断ったらしいが、明智探偵のホームズ宛書簡に対するホームズの返信は残っていない。(明智小五郎からシャーロック・ホームズへ 参照)
 
 山本周五郎訳述の『シャーロック・ホームズ』は152頁の長篇である。
 来日したホームズは、モンゴール王の宝玉(その価値は百億万円)を手に入れるため悪人と闘う。宝玉のありかを知るためには4枚の地図を集めなければならないのだ。

 1914年(大正3年)の『最後の事件』のときに60歳だったホームズは、さらに年齢をかさねても少しも衰えていない。ホームズの活躍は英国が舞台だったときと変わらない。正典に含まれる要素の多くが山本周五郎版ホームズにも出現する。
 たとえばベーカーストリート・イレギュラーズが帝都東京に現れるわけにも行かないから、代わりに凡太郎という浮浪児がホームズの助手をつとめる。49頁にはこう書いてある。

 真田男爵邸を出たホームズは、そこから直ぐに自動車で帰る村田刑事課長と別れたが、待たせておいた凡太郎の姿が、いくら探しても見えない、――一体どこへ行ったんだろう、怪しみ乍ら門前の街を歩いてみると、とある電柱に鮮やかに白チョークで、次のような文句を走り書きしてあるのが眼についた。
――怪しい男が邸へ入って又出てゆきました、僕はこれから後をつけます、凡太郎――
「ふーむ、さてはあの脅迫状を持って来た奴だな、凡太郎なかなか味をやるぞ、うい奴、うい奴」
 にっこり頷いてホームズは歩き出した。

 これを見ると、ホームズはどうも日本語が読めるようだ。それとも浮浪児の凡太郎が実は英語の達人で、白チョークの文句を英語で書いたのだろうか?
 凡太郎が「うい奴、うい奴」だというのはホームズの独白だ。英語では何と言ったのか? まさかホームズにお稚児さん趣味はないと思うけれど。
 毒矢を使うラマ食人種が出てくるのは『四人の署名』に似ている。軽井沢でホームズが滝壺に転落するのはライヘンバッハの滝を彷彿とさせる。『まだらの紐』に至っては、ほとんどそのまま日本で再現される。

『樅の木は残った』(伊達騒動の話)や『青べか物語』(東京ディズニーランドの話)の山本周五郎が訳述したホームズ譚を発掘してくれた末國氏と作品社に感謝したい。
 作品社編集部では山本周五郎の探偵小説が掲載されている可能性のある雑誌を探しているそうです。

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