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2008年11月14日 (金)

シャーロック・ホームズ学の課題と展望(3)

 シャーロック・ホームズ学の分野では、今後日本からもオリジナルな研究が出てくることが大いに期待されるのであるが、そのための大前提は、正典を正しく読むことである。 
 先に見たように、ホームズの翻訳史はすでに百有余年になる。明治以来、最近の光文社文庫版まで、何十種類の訳が出ていることか。ところが、正典Canonと呼ばれるほどのテキストなのに、誤訳がなくならないのはどういうわけだ。

 まあ翻訳に誤訳は付きものですがね。私なども仕事にしているから身に覚えはあります。うっかりや勘違いは誰にでもある。編集者がちゃんとチェックしないのがよくないのだ。
 直井明氏や古賀正義氏のような人による事後チェックも有効だ。

 しかし、特に古賀氏の本を読むと、ちょっと怖くなりますね。出てくる誤訳のほとんどが「受験生的間違い」なんだもの。
 私は昔そういうのを商売の種にしていたから、うんざりだ。検事になって摘発する気は起きない。
 ただ、正典の解釈に関わる問題だけは、斯学のために指摘しておくべきであろう、と考える次第であります。
 そういう問題は、大小取り混ぜて、たとえば

・牧師か神父か
・棍棒かステッキか
・モリアーティ元教授の職業?
・ホームズの棒術?
・コナン・ドイル卿?
・デブかガッチリか

 まだまだあるでしょう。少なくとも『ホームズの頭蓋骨』と『プロの美人たち』については言いたいことがある。

 「シャーロック・ホームズ学」の話であった。

 まず正典自体の研究が大切だ。信頼できる本文と挿絵が
http://www.ignisart.com/camdenhouse/canon/index.html
にあります。

Scan22

 正典をじっくり読み込むと、「シャーロック・ホームズの世界」の面白さが分かってくる。次は同名のサイト   
http://www5.ocn.ne.jp/~shworld/
を見ない手はないのだ。

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コメント

A Study in Scarletはどう訳されるべきだと思われますか。ちなみに、私は悪名高き「緋色の習作」主唱者です。

投稿: 土屋朋之 | 2008年11月15日 (土) 22時35分

「緋色の習作」の主唱者は土屋さんだったのですか。僕は自分では「緋色の研究」以外に考えたことがなかったので意表を突かれた。
I must thank you for it all. I might not have gone but for you, and so have missed the finest study I ever came across: a study in scarlet, eh? Why shouldn't we use a little art jargon. There's the scarlet thread of murder running through the colourless skein of life, and our duty is to unravel it, and isolate it, and expose every inch of it.
のart jargonを重視するわけですね。しかしstudyはやはり「研究対象」と取った方がよいのでは? study in black and whiteならば、「わざわざ白黒で描いた習作」。study in scarletは「わざわざ緋色で描いた習作」になるのでは? ここではそうではなくて、対象自体に「血の色」があるのではないでしょうか?

投稿: 三十郎 | 2008年11月17日 (月) 00時11分

「緋色の習作」続き。ホームズがart jargonという言葉を使ったときは、「study=etude=習作」が頭にあったのではないか。二重の意味にこれまで誰も気がつかなかった。しかし和訳では一方だけになってしまう。「習作」から、「何が誰の作品?」と考えるとちょっと落ち着かない。むつかしいですね。

投稿: 三十郎 | 2008年11月18日 (火) 11時08分

シャーロキアンの田中喜芳さんの調査によると、English native speakerのシャーロキアンの中でも意見が分かれているようです。Baring GouldやVincent Starrettクラスになるとさすがに「習作」の意味があったことを認識しています。私は、この会話の中では、art jargonと言っている以上、「習作」の意味で使ったものだと信じて疑いませんが、題名としては「研究」もアリかなと思っています。

投稿: 土屋朋之 | 2008年11月18日 (火) 22時44分

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