« 裁判員に選ばれたら | トップページ | 柔道か柔術か(28) »

2008年12月 4日 (木)

柔道か柔術か(27)

 ラグビーはどうして始まったか? 
 1823年、名門パブリックスクールのラグビー校の校庭でフットボールの試合が行われていた。興奮したウィリアム・ウェッブ・エリス少年は思わずボールを抱え込み、相手ゴール目指して走り出した――というのは有名な話だ。
 剣術はいつどうして始まったか? 古すぎて起源は分からないけれども、塚原卜伝(1489-1571)などが初期の剣豪だろうか。卜伝は宮本武藏が木刀で撃ちかかったのを鍋の蓋で受け止めたそうだ。

Nabebutabokudennmusasizu

 柔術についても、剣術ほどではないが古い言説・文献は多い。関口流、起倒流などの流派名は門外漢でも知っていて、それぞれ伝書があることは想像できる。
 こういうふうにスポーツや武術の起源をたどろうという発想は、我々日本人には当然のことだ。しかし外国では必ずしもそうではないのではないか。
 極端な例を挙げてみよう。

6202ef5d

 コムドをやっている人たちはどう思っているか? コムドとは韓国剣道のことである。剣道は倭奴(ウエノム)が始めたと思っている人が多いけれど、そうではない。ウリナラのものなのだ! 起源は韓国だ! アイゴー!
 でもいつの時代にどういう階級の者が日本刀(韓国刀?)を振るったのか? 韓国に侍がいたのか? 宮本武蔵や荒木又右衛門みたいな剣豪がいたのか――というようなことを聞いてみたいし、もし私が韓国人ならば自問するだろう。
 しかし、一度「ウリナラのものだ」と決めてしまえば、そういう細かいことなんか気にしない――という意識の仕方があるらしい。
 日本人のようにいちいち起源を気にする方が特殊なのではないか? 
 これは日本人のliteracyの高さと関係があるのではないか。日本人は何でも記録に残してきた。庶民が読み書きを知っているから、日本史には史料がほとんど無限にある。
 英国でも上流と中流上層には、記録を残す習慣がある。だからラグビーやクリケットの歴史をたどろうと思えば、史料に事欠かない。
 武術でも同じだ。トーナメント(「馬上槍試合」)についてはいくらでも文献がある。

800pxhausbuch_wolfegg_21v_22r_schar

 コナン・ドイルは、中世の武術、特に弓術に関する古い文献を渉猟して、『白衣の騎士団』を書き上げた。

 サブミッション・レスリングの源流となる騎士の格闘術が仮に存在したとしたら、「伝書」が残っているはずだ。日本の柔術に初めて接しても、驚愕することはなかっただろう。「柔術とは我々のアレと同じだな」と思えば済むのだ。ところがそうはならなかった。少なくとも前田日明選手の「西洋の騎士が関節を極め合う戦いをした」という推定は、間違っていることになる。
 
 レスリングはどうか? レスリングは中流以下の階級の競技であって、文献が少ない。
 プロレス雑誌『Gスピリッツ』の最近号に載った那嵯涼介氏の研究は労作であり学ぶところが多いが、キャッチ・アズ・キャッチ・キャンの起源については、決定的なことは言うには史料が足りないようだ。

|

« 裁判員に選ばれたら | トップページ | 柔道か柔術か(28) »

コメント

初めまして、那嵯涼介と申します。
何度かGスピリッツの拙稿をお取り上げ頂きまして有難うございます。
ご挨拶はまた改めまして、致したく存じます。

本日は不躾ながら、ひとつ宣伝をさせて下さい。
12月17日、(株)クエストよりカール・ゴッチさんのライフストーリーDVD、『プロレスの神様カール・ゴッチ -その真実と真髄-』が発売になります。
もうすでにアマゾンその他で、予約販売が始まっております。
http://www.amazon.co.jp/%E7%A5%9E%E6%A7%98%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%83%83%E3%83%81%E3%81%AE%E7%9C%9F%E5%AE%9F-DVD-%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%83%83%E3%83%81/dp/B001GBAERG

これはプロレス史研究家である流智美氏がプロデュースした作品で、スライド写真によりゴッチさんのレスリング人生を流さんの解説付きで振り返るパート、不肖私も含めた研究家数人による時代ごとの解説など内容満載ですが、何と言ってもこのDVDの目玉は、ゴッチさんの日本デビュー戦である、1961年5月1日の吉村道明戦、十数分間の映像が収録されていることでしょう。

全盛期と呼べる、36歳のゴッチさんの動きは素晴らしいです。
この時代までのゴッチさんの映像が公開されるのは、恐らく世界初ではないでしょうか。
もちろん日本のプロレスファンに衝撃を与えたジャーマンスープレックスホールドも、バッチリ収録されています。
これに流智美の名解説が入るのですから、言うことはないでしょう。

是非、ご覧下さい。

投稿: 那嵯涼介 | 2008年12月 5日 (金) 10時00分

ありがとうございます。ゴッチ36歳のジャーマンスープレックスが見られるなんてすばらしい。ぜひ入手します。ゴッチが150キロのモンスター・ロシモフを投げたことは、むかしプロレス雑誌で読んだのだったか。記憶がはっきりしません。

投稿: 三十郎 | 2008年12月 5日 (金) 10時34分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/21109/25909139

この記事へのトラックバック一覧です: 柔道か柔術か(27):

« 裁判員に選ばれたら | トップページ | 柔道か柔術か(28) »