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2009年1月 2日 (金)

シャーロック・ホームズの階級(2)

Strand

 コナン・ドイルは、ストランド・マガジンの1899年10月号から12月号にかけて『クロックスリーの王者』The Croxley Masterというボクシング小説を連載した。

 ロバート・モンゴメリーは失意のあまり両手で頭を抱えて机に座っていた。目の前にはオールドエイカー博士の処方がひろげてある。傍らにはいくつもに仕切られ、それぞれにラベルの貼られた木製のトレーがあり、コルクの栓、ねじれた封蝋などがはいっている。その手前にはたくさんの空の瓶。しかしモンゴメリーは仕事をする気力すらわいてこなかった。がっしりとした肩を力なく落とし、両手で頭を抱えたまま座りつづけた。(富塚由美訳)

 モンゴメリーは、かつてのコナン・ドイルのように苦学している医学生である。医者のオールドエイカー博士の助手として、処方通りに調剤するのが仕事である。「失意のあまり両手で頭を抱えて云々」というのは、卒業まであと一学期というのに、学費60ポンド(70万円くらい?)の工面がつかないからだった。
 オールドエイカー博士が学費を貸してくれないだろうか? 頼んでみると、「そんな頼み事をするなんて、どうかしているんじゃないかね、モンゴメリーくん。……断らなきゃならんわしの辛い立場を考えても見たまえ」
 モンゴメリーは細君の薬を取りに来た乱暴者の炭鉱夫と喧嘩して、右ストレート一発でのしてしまう。これが思わぬチャンスを呼ぶことになる。その日の午後、炭坑の所有者の息子、酒場の主人、調教師の三人組が彼を訪ねてきた。
「ちょっと、立ってみな、若けえの。立ち姿が見たい」
 と酒場の主人がいい、三人はモンゴメリーの体格をあれこれ品定めする。

Croxley1_4
シドニー・パジェットによるストランドマガジンの挿絵。The World of Holmesより転載させていただきました。http://homepage2.nifty.com/shworld/03h_s_paget/vol.18/croxley_1/croxley_4.html

「モンゴメリーさん、最近体重を量ってみたかね」
「154ポンドです」
「だからウェルター級と言ったろう」

 というやりとりがある。ウェルター級のリミットは147ポンドだから、7ポンド(3.18キロ)超過している。トレーニングすればそれくらいは減量できるという意味だろうか。
 1899年にはウェルター級という階級が確かにあったことはこれで分かる。ところが、話が進んでいよいよボクシングの試合が行われることになると、ウェルター級云々は全く無意味になってしまう。(続く)

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