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2009年1月25日 (日)

柔道か柔術か(48)

 西洋の関節技?

 プロレスの関節技は柔術が起源だという説があるが、本当か? 関節技は西洋のレスリングに元々あったはずだ。その証拠として、16、17世紀のドイツやオランダの格闘技術書の挿絵がある――というのは那嵯涼介氏の主張だった。(それに対しては柔道か柔術か(32)で反論した。)
 同じことは西洋人も考えるらしい。
 英語のディスカッション・フォーラムで似たようなことを論じているのを見つけた。
http://judoforum.com/lofiversion/index.php/t12670.html
 
 17世紀のオランダ語のレスリング教本に関節技らしきものが載っている、と言いだした人がいる。 
Nicholaes Petterという人が1674年に
Klare Onderrichtinge der Voortreffelijcke WORSTEL-KONST
という本を出しているというのだ。(Worstel=レスリング Konst=術(ドイツ語のKunst)らしい。)
http://jfgilles.club.fr/escrime/bibliotheque/petter/index.html
 この本の挿絵を見ると

11

 関節技がちゃんとあるではないか、というのだけれど、これは無理筋ですね。
 (32)で書いた私の反論を、ほとんどそのまま繰り返せばよろしい。
 これは関節「技」と言えるレベルではない。相手の腕をねじ上げるくらいのことは特に研究しなくてもできる。それに、双方立ったままでは、関節技はほとんど極まらないはずだ。関節を極めるには、相手を倒してコントロールするのが先決だ。立ったまま双方動いていて、関節を極められるか? よほど実力差がなければ無理でしょう。
 これくらいのことが、西洋人にはなかなか分からなかったものと見える。20世紀のレスラーの「関節技」の写真にも随分変なのがある。

Catchwrestling_net

 これで技が極まったら目出度いけれど、そうは問屋が卸さないよ。

Catch1

 この写真は前に出しました。やっぱり立ったままではだめだ、寝なければ。しかし、これからどうするつもりかね。相手の右腕を極めるのか左腕を極めるのか? 柔術の真似のし損ないですね。

「プロレスリングの関節技は柔術から取り入れたものだ
 これが私の提示する仮説です。これが証明できるとは言わない。「何年ごろこういう具合に取り入れました」という当事者の証言が出てくるとは思えないから。だから周辺から固めようというので、だいぶ固まってきたと思うけれど、どうですか。

 一つだけ、留保を付けておく。前回(47)で、英語版ウィキペディアは、英国のレスラーは「サブミッション・レスリングという考え方(concept)を知らなかった」と書いているが、これは言い過ぎだろう。サブミッションの技術は幼稚だったかも知れない。しかし、フルネルソンやヘッドロックでもギブアップは取れなくはない。
 次回から「キャッチ・アズ・キャッチ・キャンのまぼろし」

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コメント

下の写真は
首を極めているのでは?

投稿: | 2009年1月26日 (月) 21時53分

いつも楽しく読ませてもらっています。
今回使われた写真の1枚目ですが、これは桜庭対ヘンゾのフィニッシュとなったアームロックと同じなので、必ずしも「これで技が決まったら目出度い」とまではならないと思います。今ではブラジルでもサクラバーナという名称で知れ渡っているこの技ですが、89年ごろ猪木も鈴木みのる相手に亀の体勢から決めていたので、ゴッチから伝来の技術なのでしょう。
2枚目の写真は自分もちょっと無理があるように思いますが、相手が何をやろうとしているのかわからず、レスリング技術に大きく差があればあのような体勢までは持っていかれるような気もします。わざわざ写真を撮らせるのだから、実用性よりも見栄えを取っただけというのもあるのかなと。

投稿: タカハシ | 2009年1月27日 (火) 12時56分

なるほど。桜庭の技だったのですか。知らなかった。写真を載せてから、「でも、この体勢になってしまえば、極まっているかな?」と思ったのですが。しかし、立ち技で、この体勢にどう持って行くかは非常にむつかしいと思う。この写真は関節技のポーズをして撮らせたものじゃないか、自然な流れでこの姿勢にはならないのでは、と思う次第です。

投稿: 三十郎 | 2009年1月27日 (火) 19時26分

あくまで相手がその入り方を知らないことを前提に・・・ですが(ヘンゾがそうだったように)、ジャーマンの体勢に取られた時、相手の左手首を右手で掴み、なおかつ自分の右手首を左手で掴むことで両腕の力でグリップを切り、そのまま掴みながら後ろに回ればこの写真の逆の図で腕を固められます(自分は左しか取れないので、写真の逆で説明させてもらいました)。お試しください。
でも今はもう研究し尽くされているから、そうそうプロのリングでは決まることはないんじゃないですかね。

投稿: タカハシ | 2009年1月27日 (火) 21時26分

あー、でもこの体勢にはならずヴォルク・ハンのように相手の腕が垂直になるように決まる方が自然かも知れないです。桜庭もそうだったし、自分もスパーではそういう感じでした。

投稿: タカハシ | 2009年1月27日 (火) 21時30分

一枚目の写真は自然な流れでいけますよ
向かい合っている相手の右手首を左手で掴んで
右腕を差し込んでひねりあげる
少なくとも相手が無警戒なら簡単に極めれます
 
二枚目の写真は
確かに相当極めにくいだろうとは思いますが
実は今でもプロレスに残っています
http://www.geocities.co.jp/AnimalPark/3812/sagyou.html#sutoa
検索したがこんな写真しか出てこなかったです
佐々木健介選手が使用しているようです
アメリカ修行時に習得とのこと???
足で掛けるフルネルソンです

投稿: | 2009年1月27日 (火) 21時44分

写真を探している間に
投稿がかぶってしまった
すいません

投稿: | 2009年1月27日 (火) 21時46分

なかなか勉強になります。難しいものですね。二番目の写真はフルネルソンですか。

投稿: 三十郎 | 2009年1月27日 (火) 22時04分

前田日明氏がインタビューで
間接技の最終形だけゴッチさんにいろいろ教えてもらった
というか極まった状態だけしか教えてもらえなかった
どうやって極めるかは自分で考えてねと

確かにこの形になれば極まるが
こんな風にどうやって持っていくんだよ
無理だろと思ってたら
後年ロシア勢との交流でサンビスト達が
ちゃんと使ってた あれはああやって極めるのか!
と思ったことが多々あったとのこと

まあ確かに 現代でも青木信也選手の間接技などは
写真でフィニッシュだけみると
これどうやって極めたの?ということがあります

実際はゴッチさんも 
師匠(その上の師匠は日本の柔道家かもしれないですね)から
形だけ教えられて 使えなかったのかも知れないですけど

投稿: | 2009年1月27日 (火) 22時29分

アメリカの柔術家であるJAVIER VASQUEZが2枚目の写真に近い形で相手の遠い側の腕を両手で引っ張って極めていた記憶があります。
(ガードからの糸通しからだったと記憶していますが)

先日戸井田カツヤ氏のセミナーでこの形からのストラングルホールドを習ったように思います。首を極めていましたが。

投稿: エセ柔術家 | 2009年1月27日 (火) 22時57分

なるほど、想像もできない技が色々あるのですね。デストロイヤーの四の字固めなんかは誰が発明したのだろう?

投稿: 三十郎 | 2009年1月29日 (木) 18時45分

バディ・ロジャースじゃなかったですかね?
4の字固めは

キャッチの技でもTony Cecchineの動画などをみると
おいおい これほんとに出来るんかい!っていうのが
多いです

投稿: | 2009年1月29日 (木) 21時58分

ここで自分も仮説を。

>極まった状態だけしか教えてもらえなかった
>どうやって極めるかは自分で考えて

もしかしたらライレージム等ではこれが普通だったのではないでしょうか。単純に手のうちを明かすこととイコールとなる丁寧な指導は、自分の必殺技の効力を落とすだけです。基本的には練習サークルと同じスタンスだったと思うんですよね。指導で収入を得ていたとは考えにくいので。
対するタニは柔術普及のために渡航しているので、日本と同じように教えを請う人には1から指導したと推測します。ただ「オレより強いヤツを探しにいく」のが目的なら、秘伝は内緒にしておいた方が効果は高いはずです。

ということで自分は「まるっきり関節技の技術がなかったわけではないが、柔術と触れることで飛躍的進歩を果たした」説派としてこれからも楽しませてもらおうかと思います(笑)。

投稿: タカハシ | 2009年1月30日 (金) 12時40分

すいません、書いてからちょっとニュアンス違ってる気がしたので補足で。

「レスラー全てが普遍的に共有しているような関節技の技術がまるっきりなかったわけではないが、指導体系の確立された柔術と触れることで飛躍的進歩を果たした」くらいにしておいてください。三十郎さんなりの話でもっと自分の中で整合性あるものが見つかったら、すぐさま転ぶ準備はできていますが(笑)。

投稿: タカハシ | 2009年1月30日 (金) 12時52分

私も植村 昌夫さんの言われるようにキャッチの関節技は柔術 柔道から来ていると考えます
その根拠はキャッチの創始者でるアイルランド人の炭鉱夫であるレスラーたちが高度な関節に関する知識 絞めに関する脳への障害への知識が有ったとは到底考えられないからです
彼ら西洋人の発想というのは競技であることが前提ですので危険なものはなるべく禁止する方向へ向かうのが西洋の格闘技の共通するところです
対する東洋の格闘技は護身を前提 戦場での格闘 武器無き自衛が古代から近代に渡るまで続いていたわけですので
古流の柔術 柔道は関節技に関する知識 東洋医学 絞めに関する活殺法の膨大な知識が支配者階級である武士たちが有していたわけです。

スモールタニやらコンデコマといった海外へ渡った柔道家 柔術家が20世紀初頭くらいに(あるいは19世紀末?)が海外のレスラーたちに大きな影響を与え後に独特の首関節技 アンクルホールドなどの独特の関節技に発展させていったんじゃないか
そう考えています
実際ビルロビンソンも当時(現役時代)のウイガンに優れたスポーツ医学が無かったと証言しているし
ゴッチやストラングラールイスが解剖学を研究していたのは関節に関する知識を自分自身で研究する必要性に迫られたからだと感じます
師匠が活殺の知識の膨大な柔術家ではないから独学をせざるをえなかった
絞め技が反則 邪道視される所以は脳への障害を危惧したからではないか?
そう考えます

投稿: NダDサク | 2009年1月30日 (金) 12時53分

なるほど、なかなか難しいところですね。問題は(詳しくはこれから書くつもりですが)、プロレスの関係者たちが記録を残してくれないことですね。柔術やボクシングと比べると文献が少ないのではないか。ビリー・ライリー伝などが英語で出ているとよいのだけれど。

投稿: 三十郎 | 2009年1月30日 (金) 18時36分

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