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2009年2月 1日 (日)

柔道か柔術か(52)

 タニ・ユキオ対英国レスラー(1)

 グレアム・ノーブル氏のThe Odyssey of Yukio Taniに多くを負っています。
http://ejmas.com/jalt/jaltart_Noble_1000.htm

 これを全部翻訳してしまった方がよかったかも知れない。しかし、そんなに詳しく書く必要もなかろうと思ったのです。
 訳し漏らしたところを補って行きます。*印の後は、訳者コメント。

Tanicherpilloduyenishi_2

 タニ・ユキオは1900年に渡英して、初めはバートン・ライトの下で「バリツ」の教師をつとめたが、やがてウィリアム・バンキア(アポロ)と組んでミュージック・ホールで柔術家として挑戦試合をするようになったのだった。(上の写真、左がタニ、右がウエニシ・サダカズ。真ん中は「バリツ」のデモンストレーションでしょう。)

 タニ・ユキオに挑戦したレスラーは多かった。しかし、柔術のルールで戦えば、誰もが絞め技かアームロックでやられることになった。

 アマチュアレスリングのライト級チャンピオンを5度(1898,1900-02, 1904)獲得したアーネスト・グルーンは、タニとレスリングしたときのことをHealth and Strength誌のインタビューで語っている。「彼を相手にすると何もできない。ウナギみたいに掴みどころがない。もちろん、こちらが負けたよ」

*「タニとレスリングした」の原文はwrestled Tani。これは柔術ではなくレスリングをしたということだろう。タニがレスリングの試合でも活躍したことは柔道か柔術か(21)などでも触れた。

 もう一人のレスリングの強豪、ゴードン・トリンガムはこう語る。「タニと戦ったとき、何分か激しくもみ合った後、彼がお得意のアームロックで決めに来た。ところが私は前もってこの技は研究しておいたから、何とかもがいて二度までは逃れることができた。するとタニは私がそれまで見たこともない新しい種類のアームロックを繰り出してきて、私はこれで仕留められてしまった。あの技はあれから二度と見たことがない」

 1900年代初頭にプロレスラーとして一流だったピーター・ゴッツは、自分のフットワークと技はタニとウエニシに負うところが大きいと認めた。

 しかし、初めのうち、柔術が「バリツ」として紹介されたときは、真面目に取られなかったようだ。のちにマネージャーになるウィリアム・バンキアは、タニとほかの日本人が劇場でデモンストレーションをするのを見て、「あんな茶番ではだめだ」と思ったという。

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 有名なレスリング記者であったパーシー・ロングハーストも、初めて見たときは「なかなか面白い見世物だが、役には立たないだろう」と思った。ところが実際に自分がマットに立って戦ってみると、意見を変えざるを得なかったという。(続く)

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コメント

>ところが私は前もってこの技は研究しておいたから、何とかもがいて二度までは逃れることができた。するとタニは私がそれまで見たこともない新しい種類のアームロックを繰り出してきて、私はこれで仕留められてしまった

この証言で柔術起源説は少なくとも「0からの起源ではない」と考えてもいいのではないかと思いますが、いかがなものでしょうか。ただ那嵯さんの「解禁説」はロマンはありますが、この証言を重要視するとちょっと無理があるかなぁと。

投稿: タカハシ | 2009年2月 3日 (火) 18時52分

そういえば前田光世は他流試合の時は弁を弄して相手に着衣を義務付けたそうですね。タニはどうしたのか、その必要もないほど強かったのか興味深いところです。

投稿: タカハシ | 2009年2月 3日 (火) 18時54分

「前もって研究しておいた」というのは、前の対戦でやられたから研究したということらしい。柔術の技がレスラーに学習されて行く過程が分かると思うのだけれど。それに技の名前が単なる「アームロック」だ。これは「腕固め」ということで、腕をどう固めるかは示さない。そういう技はなかったということですよ。
 タニはもちろん柔道着着用で戦った。裸でキャッチ・アズ・キャッチ・キャン(=フリースタイル)で戦うこともあったが、こちらでも強かった。

投稿: 三十郎 | 2009年2月 3日 (火) 21時27分

そういう技がなかったのもかも知れないし、多種多様なアームロックのそれぞれに名前を付けられるほどの理解度がなかったのかも知れないですね。リングスも初期はなんでもかんでもアームロックで公式発表されていました(笑)。

投稿: タカハシ | 2009年2月 4日 (水) 12時28分

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