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2009年2月 3日 (火)

柔道か柔術か(53)

タニ・ユキオ対英国レスラー(2)

 パーシー・ロングハーストは、Health and Strenght誌の1902年1月号に「バリツとヨーロッパのレスリング」という記事を書いている。下の絵はこの記事の挿絵ではない。服装は参考になるでしょう。Jujitsu_painting

「私のバリツとの個人的な出会いは、ティボリ劇場に出ていた二人の日本人の先生[タニとウエニシ、括弧内は引用者ノーブル氏による注、以下同じ]のうちの一人と二度手合わせしたことである。この手合わせが愉快だったとは言いかねる。まだ腕の調子がおかしく、完全に直るには数ヶ月かかりそうだからだ。それでもこの経験を後悔はしていない。それどころか、このような試験に参加できて幸運だったと思う。しかし、バリツの実用性を知ったのがこういう機会だったのは幸いだ。戦場でなくてよかった。私はイングランドの各種のスタイルのレスリングには通暁している。キャッチ・ホールド[フリースタイル]でもノースカントリー[カンバーランド・ウェストモーランド]スタイルでも、同じウェイトならロンドンのどんなアマチュアにもまず負けはしない。ところが日本人のレスラーには、バリツの技で完全にやられてしまったことは認めざるを得ない。真剣勝負だったら、今ごろはキングズカレッジ病院で寝ているところだ。」

「二度の手合わせでは、私の方にハンディキャップがあった。ジャップは何をするよく分かっていたのに、私の方は自分がどうすればよいかさっぱり分からなかったのだ。バリツが最も有効な防御であるのはどんな攻撃に対してか? 誌上で再現するのはむつかしいが、実際に有効で、極度に攻撃的な防御であり、敵の無能力化を狙う。私は試合のやり方はだいたい知っていて、敵を投げ倒しても勝ったことにならないのは分かった。それどころか、倒しても逆の結果になる場合が多かったのだ。私が今までやって来たレスリングのスタイルでは、もっぱら相手を投げようとしてきた。ところが相手の方はもっと広い目的にエネルギーを向けているのだ。双方がゆったりとした短いジャケットを着るというのも私には不利だったが、バリツではこれが重要な要素なのだ。ともかく、レスリングの心得は、相手の攻撃を防ぐのに何の役にも立たなかった。ありがたいことに日本人は一番痛い強力な技を出さないでおいてくれたらしい。

* これが雑誌の1902年(明治35年)1月号に載ったということは、ロングハーストが柔術家(タニかウエニシ)と二度手合わせしたのは1901年のことだ。夏目漱石がセントジェームジズ・ホールへ「日本の柔術使と西洋の相撲取の勝負」を見に行ったのは、1901年12月のことだった(柔道か柔術か(5))。

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