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2009年2月10日 (火)

柔道か柔術か(57)

「タニ・ユキオ対英国レスラー」の続きですが、その前に当方の勇み足の訂正。
  catch wrestlingという英語は、近年になって発明された(でっち上げられた)英語だ――と書いた。(柔道か柔術か(49))
 これが間違い。
 むかしから「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」を省略して「キャッチ・レスリング」とか「キャッチ」とか言うことがあったらしい(用例は次回)。舌をかまないためでしょう。
 しかし、省略しただけであって、意味は変わらない。

キャッチ・レスリング=キャッチ・アズ・キャッチ・キャン=ランカシャー式レスリング
 であって、これは現在のフリースタイル・レスリングとほぼ同じである。
 違いは、タッチフォールではなくピンフォールで勝負を決めたこと。すなわち、スリーカウントする間、相手の両肩をマットに付けておく必要があったことです(現在のフリースタイルでは一瞬でよい)。
 Wrestling
 プロレスも20世紀初めの英国では、このキャッチ=キャッチ・アズ・キャッチ・キャン=ランカシャー式でやった。力ずくで相手の両肩をマットに押しつけようとする寝技の戦いが延々と続くので、夏目漱石が見物して
「西洋の相撲なんて頗る間の抜けたものだよ」
 とあきれた。
 この試合の経過は、漱石が取っていたデイリー・テレグラフに詳しく書いてあった。この新聞はタイムズほどではないけれども高級紙だ。イギリスの東京スポーツではない。ブリティッシュ・ミュージアムでバックナンバーを調べれば、20世紀初めの英国のプロレスがどんなものか分かるはずだ。

 catch-as-catch-canという英語の本来の意味を日本人はよく知らないから、「カール・ゴッチのレスリング」だと思い込んでいる。大間違いですよ。
「カール・ゴッチやビル・ロビンソンのレスリング」を英語でcatch-as-catch-canと呼ぶのは無理であるから、もう少し耳慣れないcatch wrestlingを使おう――というのが一部プロレスオタクの英米人で、そういう人がウィキペディア英語版のCatch wrestlingという項目を書いているらしい。
 しかし、これは英語の用法の間違いである。正しい英語では、catch wrestling=catch-as-catch-can=Lancashire wrestling(≒freestyle wrestling)なのだ。

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