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2009年8月26日 (水)

被告人は反省しているか(2)

「反省」を研究社和英大辞典で引いてみる。

はんせい【反省】(hansei)
〔内省〕 self-examination; reflection; introspection;
〔再考〕 reconsideration.
~する examine oneself; search one's heart [soul] 《on a matter》; introspect; reconsider.

「反省」という日本語に上のように英語を宛てている。そのあとに、「自己の行為を反省する」「なんで負けたかみんなよく反省してみろ」など、いくつかの和文の英訳例がついている。しかし、これでは「被告人は反省している(ことが窺われる)」の英訳はできない。
「反省」の用法を一つ忘れている。研究社は反省してもらいたい。

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 どういう英語を付け加えればよいかは、分かるのだけれども、念のために『ビジネス/技術 実用英語大辞典』を引いてみる。

はんせい【反省】
◆a hard-learned lesson  手痛い教訓[反省材料]; 《意訳》きつい戒め[お灸]
◆express deep remorse for [over, concerning] ...  ~に対し[~に関し]深い反省の意を表明する
◆with deep remorse  深い反省をもって
◆a debriefing in which they discussed what went right and wrong  何がうまく行って何がうまく行かなかったのかについて彼らが話し合った反省会
◆the letter had expressed profound remorse over Japanese treatment of British and other Allied POWs  この親書は英国人捕虜およびその他の連合国捕虜に対する日本の処遇について深い反省を表していた
◆Japanese Prime Minister Tomiichi Murayama expressed his profound remorse for Japan's actions in a certain period of the past.  日本の村山富市首相は, 過去のある時期における日本の行為について深い反省を表明した.

 この辞書は網羅的であることを目指していないから、和英大辞典に書いてあるようなことは省いてある。しかし海野文男氏と海野和子氏が「英語圏で作成された文書」から取った用例を集めてデータベースを作り、それに基づいて書いてあるから信頼できるのだ。
 単に頭の中で「反省という日本語は何という英語に当たるか?」と考えたのでは、確かに研究社和英大辞典のような訳語しか思いつかないだろう。remorseはふつう「良心の呵責、自責の念、後悔」などと訳するから。

ともかく、「反省」にremorseを使えばよいのだと分かると、自然に英文が頭に浮かんでくる。

The accused showed remorse.

 これと「被告人は反省していることが窺われる」を比べてみる。「窺われる」に対する訳がない? しかし、「自発」の意味の「窺われる」は前に述べたように英語には翻訳できないのだ。
 英文の意味は「被告人はremorseを(言葉や態度などによって)示した」ということだ。「反省しているかどうか」は被告人の内心の問題であって、裁判官といえども認定できない。「何かを示したか示さなかったか」は外に現れるはずで、これならば裁判官が認定することができる。直訳にならなかったのは仕方がない。
 というような面倒な問題など、考えたことがある人は少ないだろう。そういう素人に殺人事件などを裁かせるのが裁判員制度だ。大丈夫かな。

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