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2009年9月 9日 (水)

メンデルスゾーンの

 私は右の表[シャーロック・ホームズの特異点 1~12]で彼のヴァイオリンの腕前に触れた。これはすばらしいものだったが、ほかの才能と同じようにすこぶる片寄っていた。彼がさまざまの曲を、ことに難曲をも奏しうるのは、私の求めに応じてメンデルスゾーンのLiederやそのほか私の好きな曲をいくつか弾いてくれたことからも分かっている。ところが……
(緋色の研究)

 新潮文庫や光文社文庫では、Liederの訳が歌曲となっているが、間違い。
 Lieder ohne  Worte(Songs without Words)を省略してこう書いたのだ。メンデルスゾーンの無言歌。もとはピアノ曲だ。ホームズはヴァイオリン用に編曲したものを弾いたのだろう。

 レックス・スタウトの『ワトソンは女だった』は、これを重要な論拠の一つとして挙げている。男が男に対してヴァイオリンで『無言歌』を弾いてほしいなんてリクエストするものか、というのだ。(スタウトのWatson Was a Womanは次の箇所にあり。http://www.hwslash.net/stout.html

 Holmesjouantviolonnoirbase

わたしが
W「ねえ、こんどはメンデルスゾーンの無言歌を弾いてくださいな」
と頼むと
H「いいよ」
と、何でも気軽に弾いてくれるのでした。
 でも、気まぐれな人ですから、何も言わないでいると曲らしい曲は弾かなかった。夕方になるとよく肘掛椅子にもたれて、目をつぶって膝の上に横たえたヴァイオリンを、そぞろにかき鳴らすのでした。
W「延々と聴かされるのは、つらいわ」
H「すまなかったね。埋め合わせに何でも君の好きな曲を弾いてあげるよ」
 ホームズってやさしい人なの。

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