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2009年11月 4日 (水)

毛むくじゃらのアイヌ人(2)

 次はウィンストン・チャーチルの番だった。面白いのは、日本が美しく優雅な国だったときは野蛮国扱いされたのに、醜く俗悪になった今では敬意を払われていることだ――チャーチルはこういう意味のことを言った。

Then Mr. Winston Churchill said that what amused him was that as long as Japan was beautiful and polite, people treated it as barbarous; and now it had become ugly and vulgar, it was treated with respect, or words to that effect. 

 これで年代がだいたい分かるのです。
 1906年(明治39年)に岡倉天心(1862-1913)が『茶の本The Book of Tea』を出した。

Those who cannot feel the littleness of great things in themselves are apt to overlook the greatness of little things in others. The average Westerner, in his sleek complacency, will see in the tea ceremony but another instance of the thousand and one oddities which constitute the quaintness and childishness of the East to him. He was wont to regard Japan as barbarous while she indulged in the gentle arts of peace: he calls her civilised since she began to commit wholesale slaughter on Manchurian battlefields.

おのれに存する偉大なるものの小を感ずることのできない人は、他人に存する小なるものの偉大を見のがしがちである。一般の西洋人は、茶の湯を見て、東洋の珍奇、稚気をなしている千百の奇癖のまたの例に過ぎないと思って、袖の下で笑っているであろう。西洋人は、日本が平和な文芸にふけっていた間は、野蛮国と見なしていたものである。しかるに満州の戦場に大々的殺戮を行ない始めてから文明国と呼んでいる。(村岡博訳)

 チャーチルの言葉は、岡倉天心の英語が元でしょう。
 1905年(明治38年)9月5日にポーツマス条約が調印された。天心のThe Book of Teaは翌年5月にニューヨークの出版社から出て、たちまち版を重ねた。
 天心のエレガントな英語は評判を呼んだ。ドイツの哲学者ハイデガー(1889-1976)にまで影響を与えたくらいだ。
 ハイデガーの「世界内存在 In-der-Welt-sein」は、天心の英語に触発されたのだ。茶の本に「処世術the art of being in the world」という英語がある。これが下敷らしい。
 これは今道友信氏が初めて指摘した。私は高階秀爾『本の遠近法』で知った。

 ウィンストン・チャーチルも岡倉天心の真似をしたのだ(これを言うのは私が初めてだと思う)。アイヌ人登場は次回。

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