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2009年11月 5日 (木)

毛むくじゃらのアイヌ人(3)

 今度はチャールズ・マスターマンの番だった。彼はいつもの陰鬱な口調で言うのだった。ジャップとフン族が我々を地上から追い払ってしまう。我々よりはるかに強く狡猾で、まことに唾棄すべき奴等だ。その後も一人か二人同じように日本くたばれ論を述べた。するとウィンダムは何しろ奇想好きだから、彼一流の珍歴史理論(沢山持ち合わがあるうちの一つ)で議論を締めくくった。毛むくじゃらのアイヌ人はヨーロッパ人の従兄弟だ。彼らはいやらしい蒙古人に征服されている。「我々は毛むくじゃらのアイヌ人をぜひ救援に行くべきだ」と彼は重々しく言った。
 すると誰かがいかにも驚いたように言った。
「おやおや、ここにいる全員が、深刻な理由があるのかどうか、日本人を憎んでいるらしい。我々は日本の同盟国になったばかりか、新聞紙上でも日本の悪口は一切まかりならぬということになっている。なぜだ? いつでもどこでもジャップを誉め称えるのが流行に、決まりになっている。なぜだ?」
 これを聞いて、チャーチル氏は政治家特有の謎の微笑を浮かべた。それで先刻述べた曖昧の帳が降りてきて、この問いに対する答えは未だに出ていない。
 
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 日英同盟は1902年(明治35年)に締結された。日本の対露戦争勝利はめざましすぎたせいか、英国では警戒心を呼び起こしたようだ。
 アイヌ人はこのころはコーカソイド(白人)だと考えられていた。顔の彫りが深くて毛むくじゃらだから、どうも「ヨーロッパ人の従兄弟」らしいというのだ。(続く)

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