« 悪女か毒婦か | トップページ | 毛むくじゃらのアイヌ人(5) »

2009年11月 6日 (金)

毛むくじゃらのアイヌ人(4)

 明治時代に来日した外国人でアイヌ人に注目した人は多い。イザベラ・バードの『日本奥地紀行』(原著1880年(明治13年)刊)によると

 日本人の黄色い皮膚、馬のような硬い髪、弱々しい瞼、細長い眼、尻下がりの眉毛、平べったい鼻、凹んだ胸、蒙古形の頬が出た顔形、ちっぽけな体格、男たちのよろよろした歩きぶり、女たちのよちよちした歩きぶりなど、一般に日本人の姿を見て感じるのは堕落しているという印象である。

 アイヌ人については、イザベラ・バードはこう書いている。

 男たちは中くらいの背丈で、胸幅も広く、ずんぐりして、非常に頑丈な骨組みである。……眼は大きく、かなり深く落ちこんでいて、非常に美しい。眼は澄んで豊かな茶色をしている。その表情は特に柔和である。睫は長く、絹のようにすべすべして豊富である。皮膚はイタリアのオリーブのように薄黄緑色をしているが、多くの場合皮が薄く、頬の色の変化が分かるほどである。……顎が突き出るような傾向は少しもない。日本人によく見られるような上瞼を隠している皮の襞は決してみられない。容貌も表情も、全体として受ける印象は、アジア的というよりはむしろヨーロッパ的である。

Ainu

 イザベラ・バードは日本文明をある程度評価している。しかし日本人に対しては肉体的嫌悪感がある(堕落しているdegenerateはひどい)。アイヌ人は「ヨーロッパ的」なのに日本では野蛮人の生活だ。
「残念だ。助けてやりたい」
 とは、バード女史も言わない。
 しかし
「ヨーロッパ人の従兄弟であるアイヌ人が蒙古人に虐げられているから救援に行くべきだ」
 というトンデモ論は、このあたりに源があったらしい。

 アイヌ人は、日本人、朝鮮人、モンゴル人などと同じモンゴロイド(黄色人種)である。彫りが深い顔立ちで一見白人に見えるのは、「寒冷地適応」が生ずる前の原モンゴロイドだからだ。ふつうのモンゴロイドは寒いところで暮らすのに好都合なように顔の表面積を小さく(平べったく)する方向に進化した。髭などの体毛も少なくなった。アイヌ人はこの「進化」が起こらず白人然とした容貌のまま残った。
 というようなことは私でも知っている。これが正しいことはDNAのタイプの比較で検証されているらしい。これについては英語版ウィキペディアのAinuの項目http://en.wikipedia.org/wiki/Ainu_peopleが詳しい(正しいかどうかは知らない)。
 
 ところが私の持っている平凡社世界大百科事典(1998年版)の「アイヌ」では
 


【起源】
 彫りの深い顔立ち,波状の髪,豊富な体毛,上・下肢の長い体形など,アイヌの体質には近隣のモンゴロイドよりはむしろ遠いコーカソイドやオーストラロイドを想起させるような特徴がある。アイヌの起源についてさまざまの説が対立し,ときには人種の島といわれることがあるのはそのためである。多変量解析法による頭蓋計測値の比較をおこなってみると,アイヌはいろいろな人種にある程度の親近性を示しながら,しかもそのどれにも属さない中立的な位置を占める。これはアイヌがホモ・サピエンスの原型に近い形態特徴を保持しており,人種分化の過程をあまり経ていないことを意味するのであろう。……

 DNAのことなど、ひとことも書いてない。遅れている。「頭蓋計測値」なんかが出てきますね。(続く)

|

« 悪女か毒婦か | トップページ | 毛むくじゃらのアイヌ人(5) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/21109/32070091

この記事へのトラックバック一覧です: 毛むくじゃらのアイヌ人(4):

« 悪女か毒婦か | トップページ | 毛むくじゃらのアイヌ人(5) »