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2009年11月 7日 (土)

毛むくじゃらのアイヌ人(5)

 平凡社世界大百科事典のアイヌの起源に言う「頭蓋計測値」というのは、たとえば

"You interest me very much, Mr. Holmes. I had hardly expected so dolichocephalic a skull or such well-marked supra-orbital development. Would you have any objection to my running my finger along your parietal fissure? A cast of your skull, sir, until the original is available, would be an ornament to any anthropological museum. It is not my intention to be fulsome, but I confess that I covet your skull."

「ホームズさん、あなたは非常に興味深い。ここまで長頭とは思わなかった。眼窩上隆起もこれほど顕著だとは。顱頂縫合を触らせていただけますか。あなたの頭蓋骨を石膏型に取れば――現物はまだ入手不可能でしょうから――人類学博物館の呼び物になります。お世辞抜きで、あなたの頭蓋骨はぜひ欲しい」

 ベアリング=グールドの考証によれば、これは1888年(明治21年)9月25日のことだった。もちろん『バスカヴィル家の犬』の事件が始まった日だ。ホームズの頭蓋骨を欲しがったのはジェームズ・モーティマー氏である。医師でアマチュアの人類学者だった。
 ホームズは自分も科学のためなら何でもしたから、喜んで頭を触らせてやったに違いない。ワトソンが省筆して書かなかっただけだ。頭蓋骨の石膏型が「名探偵ホームズ34歳の砌の髑髏」として人類学博物館に展示されたかどうかは分からない。

  シャーロック・ホームズの頭蓋骨は長頭dolichocephalicであった。長頭の反対は短頭brachycephalicである。

Troe234 P35f3
 長頭(上)と短頭(下)の頭蓋骨(生前の現物の写真)

 頭蓋骨の幅を長さで割った数値を「頭長幅示数」といい、この数値が小さいのを長頭、数値が大きいのを短頭という。
 写真上の長頭は後頭部が出っ張っているが、短頭には出っ張りがない。長頭か短頭かは人類学上きわめて重要な指標だった。

 主としてヨーロッパに住むコーカソイド(白色人種)について、世界大百科事典は

北の北方(ノルディック)人種は高身長・明色・長頭の人々で皮膚や虹彩の色はきわめて淡い。アーリヤ人種という誤った名で呼ばれることがある。中央の帯は,東のロシア領の中身長・明色・短頭の東ヨーロッパ人種と,色素の割合に多い短頭の2人種からなる。後者は低身長のアルプス人種と,高身長のディナール人種である。南の帯は高身長・濃色・長頭の地中海人種の大集団によって構成される。………………アイヌも波状毛,多毛などコーカソイド的特徴を示すが,モンゴロイド的な特徴も多く,分類が困難である。 
  
「アイヌ人はヨーロッパ人の従兄弟である」は、この百科事典の記事の時点(事典は1998年版だが、記事執筆はもう少し前か?)ではまだ完全には否定されていなかった。(続く)

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コメント

ホームズの頭蓋骨を欲しがったジェームズ・モーティマー(JM)氏とは実はジェームズ・モリアーティ(JM)教授だったという説がありますね。頭蓋骨を欲しがった理由は別にあったというわけです。

投稿: 土屋朋之 | 2009年11月 7日 (土) 15時24分

なるほど。それは考えつかなかった。JMは何か変な気がしたのにねえ。

投稿: 三十郎 | 2009年11月 7日 (土) 16時41分

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