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2009年12月17日 (木)

センセーショナルな文学?(1)

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Sherlock Holmes -- his limits
1. Knowledge of Literature. -- Nil.
2. Knowledge of Philosophy. -- Nil.
3. Knowledge of Astronomy. -- Nil.
…………
9. Knowledge of Sensational Literature. -- Immense. He appears to know every detail of every horror perpetrated in the century.
…………

シャーロック・ホームズの特異点
一、文学の知識――ゼロ
二、哲学の知識――ゼロ
三、天文学の知識――ゼロ
…………
九、通俗文学の知識――該博。今世紀に起きた恐るべき犯罪はすべて詳細に知っている。
……
(『緋色の研究』延原謙訳)

 1881年(明治14年)、ワトソンはたまたま同居人となったシャーロック・ホームズという男が地動説や太陽系のことも知らないのにびっくりして、彼の知識の限界を確定しようと一覧表を作ってみた。
 しかし「通俗文学」とは何だろうか? この訳語を光文社文庫の新訳も踏襲しているが。

九、通俗文学の知識――幅広い。今世紀に起きたすべての凶悪犯罪事件に精通しているらしい。
(日暮雅通訳)

 数年後のストランド・マガジンにThe Scandal of Bohemiaという短編が載ることになる。これは「通俗文学」か?
 通俗文学の反対は「純文学」か? 
 英語ではpure literature?  これは辞書に書いてあるけれども、ちょっと怪しい。グーグルでフレーズ検索してみると(世界中にアンケートを取るようなものだ)、この英語は日本の「純文学」の訳語専用に近いようだ。
 英語では芥川賞向きか直木賞向きかなんて区別はせずに、単にLiteratureというのではないだろうか? 区別したければ通俗文学はpopular literatureくらいでしょう。
 英語でどう言うかはひとまず措くとしても、「文学の知識はゼロ」と断定しておいて「通俗文学の知識は該博」はおかしいでしょう。「文学」は高級文学、低級文学、純文学、通俗文学など全部含むはずだ。
「今世紀に起きたすべての凶悪犯罪事件に精通」するために読むべきは通俗文学(犯罪小説など?)ではない。

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コメント

名古屋女子大の木原先生曰く「十九世紀後半、英国において「扇情小説(センセーション・ノヴェル)」とよばれる小説のジャンルが確立されました。そこには、重婚、姦淫、監禁、誘拐、詐欺、殺人など、所謂「センセーショナルな出来事」が溢れ、当時の読者、とりわけ、女性の関心を集めました。」。これはSensational Literatureと関係ありますか。的外れだったでしょうか。

投稿: 土屋朋之 | 2009年12月17日 (木) 21時15分

問題はLiteratureの方です。何と阿部知二訳が正解なのですね。これから書きます。

投稿: 三十郎 | 2009年12月17日 (木) 21時31分

解答が楽しみです。創元推理文庫の阿部知二訳も来年から深町眞理子訳に少しずつ取って代わられて読めなくなるかもしれません。

投稿: 土屋朋之 | 2009年12月17日 (木) 21時45分

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