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2009年12月18日 (金)

センセーショナルな文学? (3)

「これはなかなか大変な事件だよ。僕は弁護士ジョン・ガリデブ氏の正体を突き止めた。誰あろう『殺し屋エヴァンズ』なのだ。極めつきの大凶状持ちだよ」
「と言われても僕には分からんが」
「ああ、ニューゲイト・カレンダーを覚え込んでおくのは君の商売じゃないね。……」

 しかしホームズの商売には、ニューゲイト・カレンダーは不可欠だった。
 The Newgate Calendarは、ロンドンのニューゲイト監獄における死刑執行の記録をもとに編集した「大犯罪者列伝」である。

Newgate4_2 

(ニューゲイト監獄前における死刑執行)

 有名な大悪党の行状とその処刑までを詳しく語り、挿絵を添えた。1774年に全5巻の「第一次総集編」が出版され、1824年と1826年に続編が出た。
 
 ニューゲイト・カレンダーの本文は、気持ちが悪いので私は読んでいないけれども、先進国イギリスの犯罪者はさすがにすごく、日本などとは比べものにならないようだ。
 
Newtp http://tarlton.law.utexas.edu/lpop/etext/newgate/newtp1.htm

 目次の一部を見てみよう。第1巻37頁からは17世紀初めジェームズ一世の治世に処刑されたソーニー・ビーンを取り上げている。彼はスコットランドの洞窟に妻、子、孫など48人とともに住み、1000人以上を殺して食べていたという。

Sawney_beane
(洞窟の前に立つソーニー・ビーン。妻らしき女性が左手に人間の脚を持っている)

   このニューゲイト・カレンダーは日本語で読める。この翻訳は大変な仕事だったと思う。訳者の藤本隆康氏は語学ができて神経が丈夫な人なのだろう。

 ホームズは外国の犯罪にも通暁していた。ドイツ語とフランス語は堪能なので(ゲーテやフローベールを原文で引用している。しかし「文学の知識ゼロ」のはずだけれどなあ)、独仏の犯罪実録も書架に常備していたに違いない。だから、グルーナー男爵やブルヴァールの暗殺者ユレなどにも十分対抗できたのだ。

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コメント

お久しぶりです。

(3)を読んで、なるほどと思いました。
literature=文学、と決めつけるなということですね。

たいへん勉強になりました。

投稿: 熊谷 彰 | 2009年12月19日 (土) 12時23分

恐れ入ります。literatureを文献はよくありますね。

投稿: 三十郎 | 2009年12月19日 (土) 13時40分

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