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2010年1月12日 (火)

させていただきます(3)

 呉善花さんの講演『日韓関係の新時代――わさびの文化と唐辛子の文化』を英訳したのは十数年前のことだ。原文は日本語で、これを私が英訳した。
 日本語原稿は残っていないので、英訳から一部を復元してみる。

……日本語で敬語を使うときは「させていただきます」を使わなければならないことが多いのです。
 韓国では「してあげます」や「して差し上げます」に当たる言い方をします。
 この二つの言い方は意味はだいたい同じでしょう。でも心の持ち方がまったく反対ですね。
 日本の会社でアルバイトをしていたとき、よく上司に「させていただきます」を使いなさいと言われましたが、これはとってもむつかしかった。日本人はなぜそんな入り組んだ言い方をするのだろう? 簡単に「してあげます」とか「します」とか言えばいいのに。
 この敬語を使おうとすると頭が混乱してくるのでした。でもこれは日本の習慣だし、会社のイメージにかかわるから、使わないわけには行きません。毎日こういう言い方をしているうちに、だんだんと心の持ち方が変わってきました。
 たとえば、この講演ですが、「こうやって講演をさせていただくのは……」という言い方をしますと、韓国式に言うのとは心持ちが全然違ってきます。
 韓国ならば、「講演をしてあげる」というふうに言います。すると自然に胸を張って、内心では「みなさん何もご存じないから、私が教えてあげます」というふうに思ってしまいます。
 反対に「させていただく」を使うと、自分を低い位置に置くことになります。「私は何も知らなくて、本当はみなさんの前でお話しする資格なんかないのですが……」そういう心持ちになると、体の方はどうなるか? 「させていただく」を使うと、自然に低くなってお辞儀してしまいます。(笑) 分かった。自分を低くすればいいのだ。そうすると自然に膝が曲がってくるのですね。(笑)
 
 営業用の敬語である。ところが呉善花さんは初めは違和感があったのに、だんだん日本化してきて、「させていただく」という言い方が心地よくなってきたのだそうだ。
 呉善花さんの話は、物事のとらえ方が具体的で論理が明快で分かりよい。しかし「させていただきます」が結構だというのは、いくら何でも日本びいきが過ぎるのではないだろうか。
 私は「させていただきます」は使わない。しかし、使わなくて済む立場にあるというだけのことなのか?

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