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2010年1月 5日 (火)

前田光世対カンフー

[前田光世は1908年12月にキューバに渡った。前田は翌年にかけてハバナで地元レスラーたちの挑戦を受け、いずれも楽勝した。切り札として出てきた205cmで180kgの巨人ペネタリオにはさすがに苦戦したが、巴投げからチョークを見せ技にして腕拉ぎ十字固めに仕留めた。キューバ人にはコンデ・コマに挑戦しようという者はいなくなった。]

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[当時キューバには3万人ほどの中国人が砂糖黍農園の労働者として滞在していた。そのなかの周というカンフー使いが前田に挑戦した。前田は回し蹴りに空を切らせ、相手が後ろ向きになった瞬間に飛び込んで裏投げで叩きつけた。]

 ここが決め所だ。前田は腕拉ぎ十字固めに入った。周の関節は巨人ペネタリオより柔らかかったが、極まってしまえば逃れられない。周の顔色が変わり、前列の観客にはミシミシといういやな音が聞こえた。
(マネージャーの)クリストファーは、相手がタップの仕方を知らないことに気づいた。彼は中国人の通訳に叫んだ。
「おい、試合を止めたかったらマットを手で叩けと言ってやれ」
 さらに自分でマットを叩いてみせた。
 通訳からコーチへ、コーチから周へ話が伝わり、周はすぐにマットを叩いた。
 しかし遅すぎた。周の左腕はだらりと垂れ下がっていた。
 レフリーが勝者前田の手を挙げた。前田は相手のコーナーまで行き無事な右手を握って慰めた。
 観客はこれがおかしかったらしく、大声で笑った。観客というのは身勝手で残酷なものだ。(百年前も今も変わらない。)
(p.108)

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