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2010年4月15日 (木)

インド独立裏面史(8)

 ウィンストン・チャーチル(1874-1965)は1881年(明治14年)に小学校に入学した。自伝『わが半生』によると、入学第一日に校長先生から

mensa, mensae, mensae, mensam, mensa, mensa
テーブルが、~の、~に、~を、~によって、テーブルよ

 という表を渡されて「これを覚えなさい」と言われた。
「テーブルが」から「テーブルによって」までは分かるけれども、「テーブルよ」とは何だろう? 
 質問してみると「テーブルに呼びかけるときに使う」という答えだった。「そんな馬鹿な。僕はテーブルに呼びかけたりしません」と言うと、「生意気なことを言うと鞭でひっぱたくぞ」と脅かされた。
 この年から1893年(明治26年)にサンドハースト陸軍士官学校に入学するまで、チャーチルはラテン語に苦しんだ。入学試験には二度落第して、受験予備校へ通ってやっと合格したのだった。(そういう予備校の一つで数学を教えていたのが、シャーロック・ホームズの宿敵、モリアーティ教授であった。)
→モリアーティ元教授の職業(2)など参照
http://sanjuro.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/2_dc10.html

 当時は勉強と言えばラテン語とギリシャ語を覚えることだった。チャーチルよりやや先輩のアーサー・コナン・ドイル(1859-1930)も、ストーニーハースト校でギリシャ語とラテン語をたたき込まれた。医者になるのに備えて自然科学を勉強しておくという考え方はなかったようだ。ドイルは「ギリシャ語とラテン語に費やした時間はまったく無駄だった」と回想している。

「テーブルが」から「テーブルよ」までは、主格、属格、与格、対格、脱格、呼格という格変化である。格変化する言語を屈折語という。
 英語の場合は一応、主格、所有格、目的格があるけれども、tableという形だけ覚えれば済む。これは格変化が退化したのだそうだ。
 ドイツ語だとテーブルはTischという男性名詞で、定冠詞derも変化して

der Tisch, des Tisches, dem Tische, den Tisch
テーブルが、~の、~に、~を

 の4格に屈折するのだった。
 イギリスに限らずヨーロッパ諸国では、複雑な格変化を有するラテン語とギリシャ語の勉強が重んぜられた。一つには、ラテン語ギリシャ語が欧州諸語の祖型をとどめていると考えられたからだ。
 ところが、18世紀末から19世紀に、インドのサンスクリットも「インド・ヨーロッパ語族」の古い言葉らしいということが分かってきた。

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