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2010年5月18日 (火)

ワトソンは女だった(6)

 ホームズとワトソンとワトソンは二人でローヌ川沿いに遡り、ロイクで横へ逸れてゲミ峠を越え、インターラーケンを経てマイリンゲン村に向かったのでした。
 この村を出てから、ものすごい深淵の上の狭い山道を歩いて行ったのですが、ワトソンはニセの手紙でホテルへ呼び戻されます。ニセ手紙だと気づいて、すぐにとって返したけれども、ホームズはいなくなっていた。影も形もない。残っているのは「まことに残念だけれど君とはこれでお別れだ」という手紙だけだった。シガレットケースを重しにして岩の上に置いてあった。手紙には、モリアーティ教授に追いつかれた、彼が自分を滝壺に落とそうとしている、と書いてあったのでした。
 これも相当ひどいですね。しかし『空き家の冒険』の方を見てみましょう。あれから三年がたっている。シャーロック・ホームズが突然前触れもなくロンドンに現れてワトソンなる人物はショックで気絶する。かくも長き不在の理由の説明がふるってるじゃありませんか。
 ホームズはあの狭い山道でモリアーティ教授と取っ組み合いになり、相手を滝壺に投げ込んだという。危険な敵、セバスチャン・モランに対して優位に立てるように、自分も崖から転落したように見せかけることにした。濡れた道に足跡を残さずに戻るのは不可能だから、崖を上へよじ登るほかはない。登っているときにセバスチャン・モランが上から顔を出し、岩を落としてきた。ホームズは超人的な力を振り絞ってモランの攻撃をかわし山を越えて逃げた。それから三年間、ホームズはペルシャ、チベット、フランスを渡り歩いていた。兄のマイクロフト以外には誰とも連絡を取らなかったのは、セバスチャン・モランに自分は死んだと思わせるためだった――というのですが、変ですねえ。ホームズ自身の話によれば、モランはホームズが無事に逃れたことを知っているはずでしょう。
 ホームズの話はこうだったと、ワトソンが言っているのです。しかし、まったくのタワゴトで、村の白痴以下のレベルですな。シャーロック・ホームズともあろうものが正気の相手にこんな説明をするなんて、考えられますか。仮に相手が馬鹿だとしても、こんな説明は自分の頭脳に対する侮辱です。あり得ない。ホームズがこんなことを言ったなんて、私は信じません。ワトソンが息を吹き返したときに、ホームズはこう言ったのでしょう。「ねえ、僕たち、やり直そうよ」ホームズは情が深い男です。ワトソンが辻褄を合わせようとして、こういうトンデモ話をでっち上げたのです。

 とすると、この「ドクター・ワトソン」を筆名に持つ人物はいったい誰か? どこから来たのか。どんな風な女だったか。ホームズをつかまえる前の名前は何だったか。

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