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2010年5月29日 (土)

コナン・ドイルの博士号

 ブッシュ・ヴィラで変わったことは、外の真鍮の表札であろうか。いまや「医学博士A・コナン・ドイル」である。結婚式の数カ月前に「エディンバラ大学医学博士取得のための医学士および外科医学修士A・コナン・ドイルによる論文『脊髄癆における血管運動の変化および交感神経系の働きの影響』を書き上げた。脊柱への血流の収縮についての問題という内容から言っても、広く読まれそうな内容ではない。だが、幸い医学部では好感を持たれた。コナン・ドイルは一八八五年七月に口腔の検査を受けにエディンバラへ出かけ、博士号を携えてサウスシーに帰ってきたのだった。(スタシャワー邦訳版p.98)

「口腔の検査」はいけません。むかしのイギリスには随分変な習慣があったけれど、博士候補に対して「お口をあーんと開けなさい」と言って検査してから「はい、合格。あなたには博士号をあげます」なんてことはなかった。
 原文にはoral examinationと書いてあるのだと思う(ひょっとしてexaminationの代わりにinspectionかも知れない。意味は同じです)。
 もちろん「口頭試問」「口述試験」ですね。
 博士論文の審査にも、医学部の卒業試験にも口頭試問はつきものだ。
 我田引水いたしますが、ヘスキス・ピアソンのコナン・ドイル伝にも出てきた。
http://sanjuro.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/5_f6ec.html

 やがてドイルは卒業試験の恐怖を味わうことになった。戦々兢々ではあったが、口頭試問の前の情景はやはり喜劇だった。学生たちは控室で順番を待っていた。「彼らがいかにも自信がある、不安などないというふりをしてみせるのは痛々しかった。天気が気になるとでもいうように空を見上げたり、壁に刻まれた大学の沿革などをさも興味深げに見つめたりするのだ。もっと痛々しいのは、誰かが思いきってつまらぬ冗談を言うと、みんなが一斉にこれ見よがしにしゃべり出したことである。危機にあってもユーモアだけは忘れないぞというつもりなのだ。ところが誰かがちょっと試験のことを口にしたり、あるいは昨日ブラウンなりべーカーなりがこれこれの問題を聞かれたなどと言おうものなら、無頓着の仮面はすぐに剥げ落ちて、全員が黙ってその男を見つめるのだった」。なかには意地の悪い学生がいて、むやみに難しい問題を持ち出してこれが試験官の十八番なのだと言ったりした。たとえば
「おい、カコジルのことは知っているか?」
「カコジルだって? 大昔の爬虫類か何かだろう」
「違うね。有機物だ。爆発性の化合物だよ。カコジルのことを聞かれるぜ」
 こう言いい捨てておいて、まごついている相手を置き去りにするのである。 

 医学部では学期試験でも口述試験をするらしい。
 某大学医学部の口述試験
「クランケはかくかくしかじかの症状である。君ならどうするかね?」
「はい、すぐに救急車を呼びます」

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