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2010年7月16日 (金)

ワトソンの資格(7)

Houn02

「そうです。私は結婚して病院を辞めました。同時に顧問医師としてやって行こうという望みも捨てたのです。所帯を持つのが先決だから」

『バスカヴィル家の犬』の初めの方でジェームズ・モーティマー医師(博士ではない)がこう言った。顧問医師にはもうなれないとあきらめて都落ちしてダートムアくんだりの開業医になったのだ。
 原文は

  "Yes, sir. I married, and so left the hospital, and with it all hopes of a consulting practice. It was necessary to make a home of my own."

「顧問医師」という日本語を英訳するとconsulting physicianになるのが、これは英和辞典に出ている。consulting doctorという言い方もあるようだ。consulting surgeonという英語もあることは、グーグルでフレーズ検索してみると分かる。そういう医師としてやって行くことがa consulting practiceである。
 正典ではconsulting practiceというフレーズはホームズが自分の仕事についても用いている。

「いざとなれば自分で現場に行きます。しかし、私は諮問探偵としての仕事が多く、各方面から始終要請がありますから、無期限にロンドンを離れるわけには行かないのです。If matters came to a crisis I should endeavour to be present in person; but you can understand that, with my extensive consulting practice and with the constant appeals which reach me from many quarters, it is impossible for me to be absent from London for an indefinite time. 」

 ホームズは世界でただひとりのconsulting detectiveだった。これはふつう「諮問探偵」と訳するようだ。

「僕は独自の商売があってね。世界中で僕一人だと思うよ。諮問探偵というやつなんだけれど、分かるかなあ。このロンドンには、政府の探偵やら私立の探偵やらが大勢いる。こういう連中がしくじって途方に暮れると、僕のところにやって来る。それで僕が正しい方向を示してやるのだ。証拠は全部そろえて持ってくる。こちらは犯罪の歴史の知識があるから、まあ大体は正解を教えてやれるね。犯罪相互間には顕著な家族的類似性がある。だから千件の犯罪を詳しく知っていれば、千一件目を解明できない方が不思議だろう。レストレードは有名な探偵だが、最近ニセ札事件で行き詰まっている。だからよく来るのだ」

 諮問医師(「顧問医師」の方がふつうの言い方か?)は、諮問探偵と同じように仕事をする。ふつうの医師が匙を投げそうなケースについて相談に乗ってやるのだ。ジェームズ・モーティマー氏もチャリングクロス病院でもう少し我慢して研修医を続けておればそういう偉い医者になれたかも知れない。しかし結婚したのなら仕方がない。
 医者の資格としては、顧問医師、専門医(specialist)、(全科診療)開業医(general practioner)があって、だいたいこの順番に偉かったらしい。
 コナン・ドイルは、顧問医師にまではなれなくても専門医になろうとした。しかし、資格と言っても、これこれの条件を満たすべしという明確な規定があったわけではないようだ。

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