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2010年8月 3日 (火)

コナン・ドイル、ホームズを語る(1)

 シャーロック・ホームズが実在人物だと思っている人はかなりいるようだ。一つにはホームズが何度も舞台に現れたためだろう。
 1910年に私はロンドンのアデルフィー劇場を六ヶ月の契約で借り切って『ロドニー・ストーン』を自分のプロデュースで上演し始めた。ところが客が入らない。このままでは破産してしまう。思い切って公演は打ち切ることにした。すぐに閉じこもって全力で新作に取りかかった。一つめざましいホームズ物を書いてやろう。一週間で『まだらの紐』の演劇版を書き上げた。前の出し物がこけてから二週間たたぬうちに新作のリハーサルに取りかかることができたのだ。
 結果はかなりの成功だった。ドクター・グリムズビー・ライラット〔小説のロイロットを演劇版ではライラットとした〕役はリン・ハーディングがやった。癲癇の気味がある恐るべきドクターを、ハーディングは見事に演じてくれた。ホームズ役のセインツベリーもよかった。公演が終わるまでには前作の失敗による損失を取り戻して少々資産を蓄えることができた。『まだらの紐』はレパートリーになって、今でも地方巡業で上演中である。
 タイトルロールには立派な大錦蛇を使った。こいつのことは大いに誇りに思っていたから、ある劇評家が劇をけなしつけたのはよいとして、締め括りに「山場では明らかに人工と分かる蛇が出た」と書いたのには腹が立った。それでは大金を差し上げますからこの蛇と同衾してみませんか、と言ってやろうかと思ったくらいだ。
 蛇は何匹かを交代で使ったのだが、どれも役者の天分はなかった。紐みたいにダラリと垂れ下がるだけだったり、大道具方が尻尾を突っついて刺激しようとすると穴から這い戻って噛み付こうとしたりするのだった。仕方がないので人工蛇を使うことにしたが、大道具方を始め誰もがこちらの方がよいと言った。
(p.p.88-9)

Main
(演劇版『まだらの紐』台本。7500ドルで米国の古本屋にあったけれど売り切れたようです。)

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