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2010年8月23日 (月)

サンボの起源(2)

『ロシアとサンボ』を要領よく紹介しようと思ったのだが、少々手に余る。膨大なロシア語資料を集めて本書をまとめた和良コウイチ氏の苦労は大変なものだったはずだ。仕方がない。当方は和良氏の本から離れて勝手なことを書く。ともかくこの本は読むべし。

 サンボを作ったのはロシア人の柔道家ワシーリー・セルゲイビッチ・オシェプコフ(1893―1937)である。オシェプコフが講道館で学んだ柔道に独自の工夫を加えて、現在サンボと呼ばれている格闘技を作った。グレーシー一族が前田光世から学んだ柔道(柔術)からブラジリアン柔術を作ったのと同じだ。
 ブラジリアン柔術は出藍の誉れを示した。実戦/格闘技戦ではどうやら柔道より強い。柔道ルールの試合でも寝技に持ち込んで柔道家を圧倒する強豪が出現した。これに対して木村政彦は……この辺はゴン格の増田俊也氏や柳澤健氏の連載を読んでください。

 世界中で柔道をする者が必ず講道館に従わねばならぬ理由はない。ブラジル式でも何でも新流儀を立てたければ立てればよいのだ。
 ソ連人として、「靴を履かず裸足で戦うなんて不自然だ」「体重階級制にすべきだ」「柔よく剛を制すなんて「観念論」は駄目だ」「足関節技禁止はおかしい」「もっと合理的なトレーニング法がある」などと思えば、「ソビエト柔道」を作ってしまえばよかったのだ。
 ソビエト柔道ではなくて、サンボになったのはなぜか? 1998年版の日本の百科辞典の「サンボ」の項目になぜオシェプコフの名が出てこないのか?
 オシェプコフの没年は1937年、44歳である。
 オシェプコフは1937年10月1日深夜に「日本のスパイ」として逮捕され、10月11日に留置場で心臓麻痺で死んだ。世界大百科事典によれば、サンボはこのときまだ出来ていない。


 
1938年体育スポーツ委員会がサンボという名称をつけて発足させ,翌39年には第1回全ソ連個人選手権大会が開かれた。」

 和良コウイチ氏の労作は予備知識を要求する。たとえば「トハチェフスキー」という名前はご存じだろうか? 柔道や格闘技には無関係で、和良氏のこの本にも出てこない人物であるが、知っているといないとでは本書の理解度が違う。

Tukhachevskymikhail  
 複雑に絡まり合った歴史がある。オシェプコフ一人の筋を追うだけでも大変だ。しかし格闘技と現代史に関心のある人ならば『ロシアとサンボ』は読んで面白いことは請け合う。

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コメント

はじめまして。
最近Googleにて「ツァーリ ハーン」を検索していましたところこちらの貴方のブログにたどり着きました。
当方格闘技を趣味の一つにしている人間ではありますが、そのような人間がユーラシア大陸の歴史、民族学等に興味を持つのは必然かもしれません。

ロシアとは何か、モンゴルとは何か、コーカサスとは何か、テュルクとは何か、遊牧民とは何か、スキタイとは何か、印欧人とは何か等など・・・それらの疑問に対する答えの結果の一つとして、偉大なるカレリン、ヒョードルらがいると妄想を広げている日々でございます。

これからもブログを拝見させていただきます。よろしくお願い致します。

投稿: 青帯 | 2010年8月25日 (水) 00時33分

>ロシアとは何か、モンゴルとは何か、コーカサスとは何か、テュルクとは何か、遊牧民とは何か、スキタイとは何か、印欧人とは何か等など・
ほんとに何なんだろう。私ごときに答えが分かるわけではないですが、考えるだけでも面白いですね。

投稿: 三十郎 | 2010年8月25日 (水) 05時45分

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