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2010年8月 7日 (土)

シャーロック・ホームズの筋書(3)

 ホームズはロンドンヘ行き、死体が埋葬された日の晩に戻ってくる。ホームズ、ワトソン、刑事の三人はホームズがロンドンから連れてきた男を伴って依頼人が疑っている悪者の住む家に行く。ロンドンから来た男は殺された老人に「生き写し」の扮装をしている。やせ衰えた体、しなびた灰色の顔、頭はほとんど髑髏である。さらに竹馬を装備している。悪者の家まで来ると、扮装した男は竹馬に乗り、墓場から蘇ったような声で相手の名前を呼びながら二階の寝室の窓が開いているのに近づいて行く。悪者は良心のとがめで半狂乱になって窓に駆け寄る。月光に照らされて歩み寄って来るのは自分が殺した老人の幽霊だ。近づいてきた幽霊が「お前がわしのところへ来たように、今度はわしがお前のところに来たぞ」とこの世のものならぬ声で呼びかけると、悪者は悲鳴を上げて腰を抜かす。ホームズたちが二階の寝室に駆け上ると、男はあえぎながら窓を指さす。殺された老人がこちらをにらみつけている。男は叫ぶ。「助けてくれ。何たることだ。彼が復讐に来た」 
 この劇的なシーンのあと、犯人はすべてを告白する。彼は拳銃にイニシャルを彫ってから発見された場所に隠した。ハシゴに老人の庭の土をつけたのも自分だ。恋敵を陥れれば女とその金を自分のものにできると思ったのだ。

 ドイルが結局この筋書を使わなかったのは、竹馬の話はやはり少々無理筋だと思ったからだろう。

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コメント

原文をThe Apocrypha of Sherlock Holmes(Gasogene Books)で確認しましたが、筋書きとしては面白いストーリーではありませんね。小説として別物に仕上がったかもしれませんが。竹馬という英単語は初めて目にしました。
閑話休題。
手塚治虫のブラックジャックが刊行中の全集文庫では作品発表順に読めるようになりました。
ホームズ作品も短編集のくびきから解き離して発表順に読みたいですね。
シャーロキアン的発想ににもとづいて並び替えた全集はあっても、ドイリアン的視線(?)で並べた全集は残念ながらありません。
「緋色」から始まって「ショスコム荘」で終わる作品集があっても興味深いと思いませんか。

投稿: ころんぽ | 2010年8月12日 (木) 09時52分

おっしゃる通り、筋書きとしては無理でしょうね。赤毛連盟などの傑作をドイルがどういうふうに仕上げたか、推敲のあとが残っているとよいのだけど。初期はすらすらと書いてしまったのかも知れない。
>緋色から始まって→面白いでしょうね。しかし、笹野史隆氏がコナン・ドイル全集(ホームズ以外もすべて含む)の完訳というすごい作業に取り組んでいます。私は原書房版の『白衣の騎士団』だけ読みましたが、脱帽です。

投稿: 三十郎 | 2010年8月13日 (金) 08時18分

誤訳の題材にされたダニエル・スタシャワーのドイル伝では、「バスカヴィル家の犬」におけるフレッチャー・ロビンスンとドイルの危うい関係について一章を割いていますが、笹野史隆氏の訳書では冒頭にドイルからロビンスンへの献辞が4種類掲載されており、笹野氏のドイル研究と翻訳に対する真摯な態度が伝わってきます。
私はジェラールもの、チャレンジャーものと自伝を同氏の訳で読みたいですね。

投稿: ころんぽ | 2010年8月14日 (土) 00時24分

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