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2010年10月26日 (火)

ボクシングとレスリング(2)

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  これは亀田よりひどいですね。しかしこの試合が1838年にイングランドで行われたときは反則ではなかった。ウィリアム・トンプソン対ベン・カウントの試合である。両者は1834年に一度戦ったが、このときはカウントが倒れている相手を殴って反則負けになった。1838年の再戦では第75ラウンド(!)にトンプソンが戦意喪失して負けを宣告された。カウントがイングランドのヘビー級チャンピオンを名乗った。
 クリンチから投げ技をかけるのは完全に合法だった。下のイラストでは右側の選手が内掛をかけている。
 
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  こういうイラストを見て「ボクシングとレスリングの合体」があったと思うのは早計である。たいていは解説のテキストがついているからよく読んでみることだ。
 テキストを読むと、19世紀初めのボクシングでは Wrestling was permitted. と書いてあるかも知れない。しかし「レスリングが許されていた」のだから、やはりレスリングとの合体でしょう、というのは間違い。
 Wrestling=レスリングではない。Weightlifting=ウェイトリフティングでないのと同様である。日本語でウェイトリフティングというと、「オリンピック競技の重量挙」のことだ。ところが英語では「重りを持ち上げること」という意味にすぎないのだから、単なるボディビルのことを英語でweightliftingと書いてある例はたくさんある。同様にwrestlingは「取っ組み合い」であるから「レスリング競技」に限らず、クリンチから投げを打つこともwrestlingに含まれる。
 この意味のwrestlingが明確に禁止されたのは1867年制定のクィンズベリー・ルールからである。それ以前のロンドン・プライズファイト・ルール(1838年制定)では、噛み付き、頭突き、ローブローは禁止だったが、wrestlingは合法だった。クィンズベリー・ルールでは同時にグローブ着用が義務づけられた。しかしグローブ着用の方はすぐには広まらず、試合はベアナックルで行われることが多かったようだ。1882年に「グローブをつけないボクシングは双方合意の上でも傷害罪になる」という判決が出て、英国でベアナックル・ボクシングの時代が終わったとされる。
 シャーロック・ホームズ(1854―)もコナン・ドイル(1859―1930)もクィンズベリー・ルールを知っていたから、「クリンチからの投げは卑怯だ」という意識があったようだが、同時に「素手で殴り合うのが本当だ」と思っていたらしい。
 伝記によれば1882年ごろ、ドイルは友人のバッドと戯れにグローブをつけてスパーリングをやったが、パンチをかわすうちに本気になってきて「素手で来い」ということになりかけた。
コナン・ドイルとボクシング(2)
  それはともかく、競技としてのレスリングとボクシングはあくまで別のものであった。(続く)

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