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2010年10月28日 (木)

ボクシングとレスリング(3)

 昨年、キャッチ・アズ・キャッチ・キャンの意味(3)
という記事を書いて、そこで那嵯涼介氏がGスピリッツVOL9に書いた記事を引用した。その記事ではビル・ロビンソンが

Robinson

「イギリスには昔から"オールイン(ALL-IN)"と呼ばれる試合形式があったんだ。ベアナックルボクシングとCACCをミックスしたものだと思ってくれたらいい。クリスマス近くには"ボクシング・デー"と呼ばれる日があって、毎年その日にはオールインの興行が開かれるんだ。……」
 
と言っている。
 CACCはcatch-as-catch-canの略だという。
 英語の用法を歴史的に見ればcatch-as-catch-can=freestyle (wrestling)であることは明白だ。この点については何度も詳しく書いた。まとめたのが キャッチ・アズ・キャッチ・キャン再論 と フリースタイル・レスリングの歴史 だ。
 しかし那嵯氏は「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」とはフォールだけでなくサブミッションによる決着をも包含するレスリングだと主張している。詳しくはGスピリッツ誌。また那嵯氏にはブログThis is Catch-as-Catch-Can がある。

 私は、那嵯涼介氏が紹介するビル・ロビンソンの発言はまったく間違っていると思う。ボクシングとレスリングを「ミックスしたもの」などなかった。

 毎年ボクシング・デー(12月26日)に「オールイン」の興行があった? 何年から何年まで? どこで?   
 仮に「オールイン」が「ベアナックルボクシングとCACCをミックスしたもの」ならば、パンチあり、投げ技あり、寝技あり、サブミッションホールドあり、という激しい試合のはずだ。現在のMMAからキックを取り除いたものみたいだ。絞め技はあったのかな? パウンドはどうだろう? 何年何月何日に誰対誰のどういう試合があったか、記録は残っていないのか?
 
 ボクシングには試合の記録が残っている。前回に触れたウィリアム・トンプソン対ベン・カウントの試合は、1838年4月3日に300ポンド懸賞試合として行われた。戦いは75ラウンド続いた。レフリーがカウントの勝ちを宣告したが観客は納得せず暴動になった。詳しい経過はたとえばウィキペディア英語版のWilliam Thompson(boxer)を見よ。

 レスリングにも試合の記録がある。
 私が以前に紹介したのは20世紀初めのグレート・ガマ対ズビスコの試合だった(インドのキャッチ・アズ・キャッチ・キャン(1)-(5)) 。これを見れば「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」に那嵯涼介氏の言うような意味はないことが分かる。ガマとズビスコはプロレスラーだったが、現在の「フリースタイル」のルールで戦ったのだ。サブミッションはなかった。
 もう少し昔、たとえば19世紀初めにはサブミッションありの「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」の試合が行われたのかな? 那嵯涼介氏が一試合だけでもよいから、「いつどこで誰と誰のどういう試合が行われたか」を教えてくれることを期待したい。
 ビル・ロビンソンの言う「オールイン」、すなわちボクシングとレスリングを「ミックスしたもの」は、いつどこで行われたのか? たとえば「パンチで倒してアームロックでギブアップを奪う」というような試合があったのか。記録があればぜひ見たいが……(オールインについて 参照)

 しかし、ボクシングとレスリングはまったく別のもので、両者の「合体」や「ミックスしたもの」などはなかったのだ。

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