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2010年11月 7日 (日)

六つのナポレオンの不思議(1)

 シャーロック・ホームズの『六つのナポレオン』の事件は1900年ごろの話らしい(1894年の劇的な「帰還」よりあとなのは確かだ)。
 はじめはナポレオンの石膏像が二箇所で三つ叩き壊されただけだったから、ベイカー街に訪ねてきたレストレイドも大したことではないと考えていたようだ。ホームズはなかなか興味深い、また何かあったら教えてくれたまえ、と言ったけれども。
 ところが四つ目のナポレオン像破壊はケンジントン街で起こったのだが、このときは人が一人殺されたのだった。
 被害者はポケットに人相の悪い男の写真を入れていた。ホームズとワトソンはこの写真を持って聞き込みにまわった。たぶんこんな顔だ。
 
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   一個目のナポレオン像が壊された店で聞くと、ベッポというイタリア人の石膏職人だと分かった。
 石膏像の製造元であるゲルダー社のゲルダー氏(ドイツ人)に聞くと

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「ベッポという名前です。苗字は知りません。こんな人相のやつを雇ったこちらも悪いんだ」
 ベッポは2年ほど前までゲルダー氏の下で働いていたが、街頭でイタリア人をナイフで刺し、警官に追われてゲルダー社の石膏像製造所に逃げ込んで、そこで捕まった。刺した相手は死ななかったからもう刑務所を出ているでしょう。
 
 ここまで読んで、何だか変だなあと思わないだろうか? ゲルダー氏は以前ベッポを雇っていて「腕はいい職人でしたよ」というのに苗字を知らない? 人を雇うときはふつう身元を確認するだろう。日本とは違うから戸籍謄本を出せとは言わないだろうけれども。
 ところが最後まで読むともっと不思議なことがある。ホームズとワトソンとレストレイドは夜中に張り込みをしてベッポを逮捕するのだが、翌朝報告に来たレストレイドは
「ベッポという名前らしい。苗字は不明です。イタリア人街では有名な悪者です。もともと腕はいい職人でまともな暮しをしていたのだけれども、悪の道にはまって二度刑務所に入っています。一度はこそ泥で、もう一度は同じイタリア人仲間を刺して……」
 警察も苗字を把握していない? 裁判では「被告人ベッポ(苗字不明)を懲役一年に処す」という判決が出たのか? 出獄してきても、今ならこういう不良外国人は本国に送還するはずだけれど、むかしは違ったらしい。

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