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2010年11月29日 (月)

谷幸雄、レスリングをする(2)

Theatrecard1908

 WRESTLING IN ENGLAND.     イングランドのレスリング
 [FROM OUR CORRESPONDENT.]   弊社通信員発
 LONDON, April 22.       ロンドン、(1904年)4月22日

 Another genuine money match was that between Jim Mellor, the English light-weight champion in the Lancashire style, and Yukio Tani, the clever little Jap, which was decided at the Tivoli on Monday. Tani, failing to get on a match in his own style, agreed to venture his long deposited £100 in match with Mellor in the catch-as-catch-can method, and won. He was lucky, no doubt, in getting the decision, for Mellor was the cleverer man at the game, and seemed to have the Jap fairly down on two occasions before the referee gave him the first fall at the end of half an hour’s strenuous work. Having been the aggressor throughout this period, Mellor, who is getting perilously near middle age, was naturally a little distressed when the pair came together. But, instead of husbanding his strength, he once more crowded on full sail and soon had the eel-like Jap on the floor. Tani’s defence, however, was perfect, and, taking advantage of a slip by Mellor, the Jap fixed on an arm lock from which the Lancastrian could not escape, and pressing his man down, Tani secured the second fall in a little over fifteen minutes. The third bout was even shorter, for Mellor was rapidly weakening, and the Jap, after escaping a dangerous body hold, brought his man to the floor. Mellor made a bridge, but had not strength enough to withstand the pressure exerted by Tani, who pinned his man fairly down in ten minutes, and so won the match.

 本当に金を出す値打ちのある試合がもう一試合あった。これはランカシャースタイルのライト級イングランド・チャンピオンのジム・メラーと敏活なチビのジャップ谷幸雄の試合で、月曜日(4月18日)にチボリ・ミュージックホールで勝敗が決せられた。谷は自分の(柔術)スタイルで戦うことを主張したが容れられず、長らく預けてある賞金100ポンドをキャッチ・アズ・キャッチ・キャン式の試合に賭けることに同意し、勝ったのである。勝ちを得たのは確かに幸運だと言えよう。メラーの方がレスリングでは一日の長があり、半時間の死闘の末にレフリーが一本目メラーのフォール勝ちを宣告する前にジャップを二度抑え込んだように見えたからである。この一本目は攻撃し続けだったので、危険なほど中年に近づいているメラーは試合再開のときは少々疲れていたのも当然である。しかしメラーは力をセーブせずにまた全力を出し、ウナギみたいなジャップをマットに倒した。しかし谷の防御は完璧だった。メラーのミスを突いてジャップはランカシャー人が逃れられないアームロックをかけて相手を抑え込み、谷が15分過ぎに二本目のフォールを取った。三本目はもっと短かった。メラーが急速に弱っていたためである。ジャップは危険なボディーホールドを逃れて相手をマットに倒した。メラーはブリッジしたが谷の圧力に抵抗するだけの力はなく、谷が相手を10分でピンフォールして、この試合の勝者となったのである。

◇genuine money match:「本物の賞金試合」ではありません。money matchとは、「お客がお金を出す値打ちのある試合」。それをgenuineで強調している。賞金試合はprize matchという英語でしょう。参考までに、英語版ウィキペディアのGlossary of professional wrestling termsでは

Money match
a non-title match which was the most heavily promoted of the card that is placed near or at the end of a live event, which is the main reason fans attended the event or watched the event.
 
これは現代プロレスの用語ですが、百年前でもだいたい同じでしょう。

・ほかにも訳文が異なるところがありますが、後から訳した私の方が正しいのです。

・二本目に谷が「アームロック」をかけている。柔術式にギブアップを狙うのではなく腕を取って抑え込む技をこう呼んだのだと思う。「ボディーホールド」はたぶん「胴タックルからの投げ」でしょう。

・スポーティングライフ誌は「谷に対する(1本目の)フォールは成立していなかったのではないかという者が多かった」と書いている。それに比べるとこの記事の筆者はメラーびいきだ。1本目を取る前に「ニアフォール」が2度あったと書いている。seemed to have the Jap fairly down on two occasionsの箇所。文法的にはseemed to have had the Jap fairly down on two occasionsと書くべきだが、それではくどくて口調がおかしい。

・原文は英語の文章としてはあまり上等でない。だから誤読の可能性があってむつかしい。

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