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2011年1月19日 (水)

Hereditary King of Bohemia(1)

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Your Majesty had not spoken before I was aware that I was addressing Wilhelm Gottsreich Sigismond von Ormstein, Grand Duke of Cassel- Felstein, and hereditary King of Bohemia.

「ぼくは、陛下がまだひとこともお話にならぬうちから、ボヘミア国歴代の国王でカッセル・ファルシュタイン太公、ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・ジギスモンド・フォン・オルムシュタイン陛下であると存じあげておりました」(光文社文庫、日暮雅通訳)

「ボヘミア国歴代の国王」はhereditary King of Bohemiaの訳だろうが、ちょっと変でしょう。
「歴代」が問題だ。歴代将軍といえば、初代徳川家康から15代慶喜までを指すはず。たとえば慶喜一人のことを「徳川家歴代の将軍」とは言わない。斎藤和英大辞典では

れきだい〔歴代〕
〈名〉Successive generations; predecessors
◆歴代の天皇 the successive Emperors―the Imperial predecessors
◆歴代の志を継ぐ to tread in the footsteps of one's predecessors
◆歴代史 a history

 自分ならどう訳すると考えてみた。まず頭に浮かんだのは「累代」という日本語だ。しかしこれはだめだ。歴代も累代も同じだ。延原謙氏はどう訳しているか?

「私は、陛下がまだひと言もお話になりませぬうちから、ヴィルヘルム・ゴットライヒ・ジギスモンド・フォン・オルムシュタイン陛下、カッセル・ファルシュタインの太公、すなわちボヘミア国の今上陛下にあらせられると存じあげておりました」

 なるほど、これでよろしいか。原文にはもう一箇所hereditary kingsと複数になっているところがある。これは歴代や累代でよいはずだ。

To speak plainly, the matter implicates the great House of Ormstein, hereditary kings of Bohemia.

「はっきり申せば、じつはボヘミア国累代の王室オルムシュタイン家にからまる問題なのです」(延原謙訳)
「いや、はっきり申しあげれば、ボヘミア国歴代の王室、オルムシュタイン家に関わる問題なのだ」(日暮雅通訳)

 延原訳の「今上陛下」というのは、もちろんhereditaryを今上と訳したのではない。この単語を無視して訳さなかったので、これが正解だ。
 hereditary=歴代ではない。どういう意味か? 

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コメント

あれ、このネタは以前に「女王か王妃か(2)」で採り上げたのでは?
それにしても、この売れっ子翻訳家は日本語の感覚が狂ってますね。
「ミステリマガジン」なんて、ホームズ特集になるとこの人に負んぶに抱っこだけど、
それだけの価値がある人なのか大いに疑問。
何十年もシャーロキアンやってても誤訳だらけだし。

投稿: ころんぽ | 2011年1月19日 (水) 21時36分

二重だったか。忘れてた。

投稿: 三十郎 | 2011年1月20日 (木) 12時07分

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