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2011年2月11日 (金)

シャーロック・ホームズの新訳(3)

『最後の事件』には、各社から出ている翻訳に共通する大きな間違いが二つあった。これは当ブログでかなり前に指摘している。

(1)牧師か神父か
http://sanjuro.cocolog-nifty.com/blog/2006/03/post_dd08.html 以下

(2)モリアーティ元教授の職業
http://sanjuro.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/1_cc65.html 以下

 創元推理文庫の新訳版ではどうなっているか。

(1)見るからに有徳の人らしいイタリア人の司祭がひとり、荷物はパリまで通しで託送したいのだと、片言の英語で懸命に赤帽に訴えているので、見かねてちょっと口添えしてやり、それで数分がつぶれた。(p.422)
I spent a few minutes in assisting a venerable Italian priest, who was endeavouring to make a porter understand, in his broken English, that his luggage was to be booked through to Paris.

(2)勤め先の大学周辺で、いろいろいやなうわさが聞こえてくるようになり、やがてとうとう教授職も辞するはめになって、ロンドンに流れてくると、軍人相手の個人教師となった。(p.410)
Dark rumours gathered round him in the university town, and eventually he was compelled to resign his chair and to come down to London, where he set up as an army coach.

  阿部知二訳の「イタリア人の老牧師」がなおっているのはめでたい。
 しかしarmy coachは「軍人相手の個人教師」である。モリアーティ先生、軍人を相手にして何を個人指導したのだろう。二項定理でも教えたのかな?

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コメント

古書の整理をしていたら、江戸川乱歩訳の「恐怖の谷」と「妖犬」が出てきました。
昭和5年の本でした。
乱歩とか正史がホームズを訳していたんですよねえ、感慨深い。

投稿: ころんぽ | 2011年2月11日 (金) 22時28分

ひろ坊さんのブログによると
「訳者名は江戸川乱歩になっているが、実際は代訳。乱歩は『探偵小説四十年』のなかで、直木三十五からこの全集の1、2巻を訳せと頼まれるが、忙しいので友人にやらせてもいいか、と聞くと、よいとの返事。そこで大阪から旧友(井上勝喜)を呼びよせ、「『妖犬』『恐怖の谷』『ホームズの冒険』を翻訳工場式に訳してもらった。」と記している。」
だそうです。

投稿: ころんぽ | 2011年2月11日 (金) 23時10分

ポプラ社の百年文庫『異』は、乱歩、ピアス、ポーの三幅対で、ポーの『ウィリアム・ウィルソン』を乱歩が訳しています。これは本人だと思います。
むかしは代訳・代作が横行したらしく、中村能三が大久保康雄の影武者をつとめたとウィキペディアの中村の項目に書いてあります。
川端康成の戦前の通俗小説はかなり代作があったらしい。後期作品の一部は三島由紀夫が書いたという説も読んだことがあるけれど本当だろうか?

投稿: 三十郎 | 2011年2月12日 (土) 07時21分

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